2008 Fiscal Year Annual Research Report
通信・放送融合時代におけるコンテンツ流通促進のための著作権法制
Project/Area Number |
20530089
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
鈴木 雄一 Tokyo University of Science, 総合研究機構, 教授 (20296312)
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Keywords | 通信と放送の融合 / 著作権 / 著作隣接権 / コンテンツ流通 / IPマルチキャスト放送 |
Research Abstract |
本研究の目的は、通信・放送融合時代のコンテンツ流通を促進するための著作権・著作隣接権の適切な保護、かかる権利の円滑な処理といった、著作権法制の整備について検討し、新たな時代に対応した制度設計を行うことにある。今年度は3年計画の最初となる年度であるため、まず通信・放送融合と著作権法制に関連する内外の文献を収集・整理し、文献調査を行うとともに、各種研究会等への参加に努めた。また、今年度は特に通信・放送融合時代の産物として出現したIPマルチキャスト放送に注目し、著作権法上の問題点を検討した。IPマルチキャスト放送は、有線放送とほぼ同様のサービスを提供しているにもかかわらず、著作権法上の「有線放送」ではなく、「自動公衆送信」に分類される。著作権法上の「有線放送」として認められないために、IPマルチキャスト放送事業者は著作権法上の優遇措置を享受することができず、著作権等の権利処理において不利な立場に置かれてきた。有線放送事業者とIPマルチキャスト放送事業者との間の著作権法上の「格差」については、2006年12月の著作権法改正で一部是正されたものの、この格差是正は、放送の同時再送信の場合に限定されており、自主放送の場合については先送りにされている。さらに、格差是正の要件として、地上波放送局が放送法によって規定されている放送対象地域の範囲内での同時再送信に限るという「地域限定」が設けられている。こうした地域限定は、既存の放送事業者の経営的事情に配慮したものであると思われるが、IPマルチキャスト放送の特長は、放送地域の制約を受けないことにあるので、「地域限定」は、せっかくの特長に足枷をはめているという側面もある。IPマルチキャスト放送事業者による自主放送の著作権法上の位置付けや、「地域限定」の問題点については、今後も引き続き検討していきたい。
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