2009 Fiscal Year Annual Research Report
東中欧諸国における市民社会の比較研究:自発的結社の政治的役割
Project/Area Number |
20530103
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
中田 瑞穂 Nagoya University, 法学研究科, 教授 (70386506)
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Keywords | 市民社会 / 政党政治 / 東中欧 / 新民主主義国 / 民主化 / ガヴァナンス / EU / 公共圏 |
Research Abstract |
今年度は、(1)歴史的前提条件、(2)国際的連関、(3)国内政治の動態分析の3点に分けて、市民社会組織の分析を進めた。第一の歴史的前提条件の解明に関しては、東中欧の社会における自発的組織の位置を、a.大戦間期の前提条件、b.社会主義体制の影響、c.体制転換後の制度枠組と組織の実態に分け、明らかにする作業を行った。主にチェコとスロヴァキアを対象に、昨年度入手した史料の分析をすすめ、大戦間期には、市民社会組織が各政党とつながった形で多数形成され、政策形成、政策実施上大きな役割を果たしていたことを明らかにした。この研究成果をまとめ、複数の研究会での報告、意見交換をおこなった。現在最終的に論文をまとめているところである。また、所属先の名古屋大学で行われた日中韓共同研究「東アジアにおける民主化と開発」シンポジウムにおいて、「経済発展、市民社会、及び民主制の型をめぐって」と題する報告を行い、東アジアの歴史的体験との比較の中で、東中欧の歴史的前提条件の国際比較上の位置づけを行った。 第二の国際的連関の解明に関しては、二次文献の収集を行うほか、外国人労働者の国内統合にかかわる市民社会組織を中心に、活動情報の収集を行った。日本国内でもEU研究の分野を中心に、市民社会組織の国際的連関に関わる研究が増えているので、積極的に研究会等に参加し、意見、情報の交換を試みた。その結果、EUの政策形成と実現のために市民社会組織のネットワークが形成されており、チェコ、スロヴァキアの市民社会組織もそのネットワークに参加することによって、EUから活動資金を得ていることが明らかになった。 第三の国内政治の動態分析に関しては、東中欧各国における市民社会組織と政党政治の連関を具体的論点に即しての検討をすすめた。その結果、市民社会組織は政党と系列関係を持たないこと、政党はその結果社会に足場を持たない政治家集団としての側面が増していることが明らかとなった。本年度は、その成果の一部を、網谷・伊藤・成広編『ヨーロッパのデモクラシー』の中の中欧諸国の章にまとめた。また、論文「政党戦略と政党間競合-東中欧政党システムにおける二極競合化?」2010年6月に北海道大学出版会から発行される予定である。これらの研究成果の国際的発信として、ドイツのポツダムで行われるECPR(ヨーロッパ政治研究コンソーシアム)の大会と、イギリスのエディンバラで行われるPSA(イギリス政治学会)の年次大会で報告を行い、情報、意見交換の機会を得たことは、本年度の大きな収穫であった。
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Research Products
(4 results)