2010 Fiscal Year Annual Research Report
東中欧諸国における市民社会の比較研究:自発的結社の政治的役割
Project/Area Number |
20530103
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
中田 瑞穂 名古屋大学, 大学院・法学研究科, 教授 (70386506)
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Keywords | 市民社会 / 政党政治 / 東中欧 / 新民主主義国 / 民主化 / ジェンダー / EU |
Research Abstract |
今年度は、(1)歴史的前提条件、(2)国際的連関、(3)国内政治の動態分析の3点に分けて、市民社会組織の分析を進めた。第一の歴史的前提条件の解明に関しては、東中欧の社会における自発的組織の位置を、a.大戦間期の前提条件、b.社会主義体制の影響、c.体制転換後の制度枠組と組織の実態に分け、史料に基づく分析を行った。主にチェコとスロヴァキアを対象に、大戦間期において政党が市民社会組織と結びついて社会の分節化と統合を進めたことは、政治の破片化をもたらす危険性を包含していたが、政党が合意形成を主導し、系列の市民社会組織を通して政策実施を行っていたことを明らかにし、論文「議会制民主主義への突破と固定化一経路、課題、結果」を完成させた。 第二の国際的連関の解明に関しては、EUのジェンダー平等化政策をケースとして取り上げ、EUからの国際的な規範の伝播が、国内における政策形成における市民社会組織の影響力を強化したこと、但しこの場合、国内の固有の問題状況を政策決定に反映させることが課題となることを明らかにし、「EUのジェンダー平等政策と国内ジェンダー・パラダイム」にまとめた。 第三の国内政治の動態分析に関しては、現在の東中欧各国における政党と市民社会組織間の乖離が、政治に及ぼしている影響の解明を中心に検討をすすめた。この際、一つの焦点としたのが、選挙分析である。ここでは、政党の選挙綱領や運動の分析によって、政党の支持獲得のための戦略が、市民社会組織によって組織化された固定的支持集団を前提としないものに傾斜していることを明らかにし、日本比較政治学会にて「政党戦略におけるリンケージ・モードと政党間競合パターン-チェコ共和国を事例に-」と題する報告を行った。これをもとに、東中欧、西北欧を横断する共同研究にも示唆を得つつ、論文の執筆を進めている。また、チェコとスロヴァキアにおける市民社会組織化の様態の差異が政治に与える影響については、『ヨーロッパ政治ハンドブック[第2版]』にまとめた。
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Research Products
(6 results)