Research Abstract |
本年度の研究は,これまでの貿易構造に関するデータ分析の結果を,企業行動あるいは企業関係が形成するグローバル・バリューチェーン(あるいはグローバル生産システム)と関連させて考察することである。一般に企業と貿易の関係は,Heipman et al(2004)に代表される研究のように,個別企業の生産水準と直接投資行動から考察される。それに対して,本研究では,企業行動変化に対応させて,企業組織内部構造,企業組織間関係の変化を考察し,それと関連させて,貿易構造の変化をデータ分析では考察できない側面を定性的に分析したことに意義がある。 本研究では,財市場の階層構造は,バリューチェーンにおける企業の補間構造と階層構造に規定されること,そして,企業が立地する国民経済の特性と関連することが,主張されている。 このような主張を論拠づけるために,まず,生産システムの構造を,バリューチェーン・ネットワーク・離散的市場取引という制度のであると定義し,このなかで,個別企業の補完関係と階層関係を,文献サーベイと事例研究から,明確にした。とりわけ,バリューチェーンにおける,脱垂直化と垂直化の企業構造の変化,そして,ガバナンス構造の推移をみることで,補完関係と階層構造の変化を確認し,それが部品貿易の拡大や,部品内部の貿易の階層構造を形成していることを,考察した。くわえて,サブプライム危機に端を発する経済危機後の生産システムの変化・変容を確認し,貿易の階層構造が変化する可能性を指摘した。 本科学研究費による研究成果は,日本国際経済学全国大会にて報告した。また,研究成果の一部分は,石田修『グローバリゼーションと貿易構造』,文眞堂,2011にて公表した。
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