2010 Fiscal Year Annual Research Report
スピンオフ連鎖ベースの新産業集積形成に関する地域間比較研究
Project/Area Number |
20530213
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Research Institution | Komazawa University |
Principal Investigator |
長山 宗広 駒澤大学, 経済学部, 准教授 (80453562)
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Keywords | スピンオフ / ソフトウェア / 産業集積 / 北京中関村 / 浜松 / 実践コミュニティ |
Research Abstract |
本研究は、スピンオフ企業家の集中的発生(スピンオフ連鎖)、新産業集積の形成メカニズムについて、「業種別比較研究」「地域間比較研究」を通じて実証的に解明することを目的とする。 今年度(平成22年度)は、海外と国内における新産業集積の地域間比較研究を行った。具体的には、北京中関村地域(海外)と浜松地域(国内)のソフトウェア集積(新産業集積)を事例研究の対象にして、その実態を比較分析した。特に、北京中関村地域の実態調査に関しては、個別企業に対するヒアリング調査に加えて、ソフトウェア企業の経営者およびマネージャーに対するアンケート調査も実施した。アンケート調査の項目は、(1)企業概要、(2)創業者の属性・創業時の状況、(3)創業から現在までの発展プロセス、(4)人事労務・雇用制度、(5)スピンオフへの対応、(6)中関村クラスターの特徴などである。 以上の海外と国内の事例比較研究を通じて、日本におけるスピンオフ・ベンチャーの創出条件を明らかにすることができた。現在の日本は知識労働市場の流動性が低くスピンオフが生まれにくい状況にあるが、その一方で、大企業の日本的経営システムは変容し、知識経営の一環としてコーポレート・ベンチャリングを進めている。ただ、多くの大企業では、欧米流のオープンイノベーション・モデルを描くことが出来ず、知識経営とスピンオフ問題とのジレンマに悩まされている。日本でスピンオフ・ベンチャーを創出するには、安易にシリコンバレー・モデルを移植するのではなく、こうした制度的制約を前提とした「起業学習モデル」を構築する必要がある。本研究では、個人と組織、大企業とベンチャーの対立項を乗り越える「実践コミュニティ」の概念を導入し、日本版のスピンオフ・モデルを提唱した。研究成果の詳細は、長山(2011)を参照のこと。今後、これまでの研究成果を体系的に取りまとめ、2011年度内に単著を発行する予定である。
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