2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20530232
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
鳥居 昭夫 Yokohama National University, 国際社会科学研究科, 教授 (40164066)
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Keywords | 経済政策 / 原子力エネルギー |
Research Abstract |
本研究は、電力産業に一般的にみられる下請制の影響を抽出・評価すること、さらに、電力産業における品質・サービス水準を維持するための産業組織のあり方を論じることを目的としている。この研究の成果を用いて、電力産業を中心とした公益事業において、提供される品質・サービス水準は、運用を実現する主体の産業組織にも依存するという仮説が論じられる。 本年度は研究の第2年度であり、主に初年度に構築した理論モデルの妥当性を検証することを目指した。検証は、シミュレーションモデルと実証データによる検討による。昨年度、エージェントモデルを応用して作成された理論モデルを用いて、通常のエージェントモデルと異なって、顕示原理を用いない解が最適となる可能性が示唆されていたが、シミュレーションを繰り返すことにより、この状況がかなり一般的に生じることが確認された。さらに、どのような状況の下でこの命題が成立するかを理論モデルに戻って解析した。その結果、一般の線形な需要・費用構造の下で成立する定理を導くことができた。この定理が示すところによると、線形な需要・費用構造の下で、システム全体の利益に関心を持つ際には、あえてインセンティブ契約を設定せずに、固定契約によって一定の成果を導くことができる。ないしは、下部事業部の成果に依存して事業割り当てを行うのではなく、それぞれの事業分野を画定することにも意味がある場合が多いことが示唆される。この特性により、企業においてどのような状況において、課業の縦割りが有効となり得るのかを論じることができる。この作業に並行して、現在の電力産業への適用を論じるための、資料作りが進行している。近年の原子力周辺産業の疲弊による品質水準の問題など、理論を支持する実態の把握が行われている。
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