2010 Fiscal Year Annual Research Report
「地域を形成し、人を留め置く力」〈ホールド〉の実証研究-「津軽の人生」調査
Project/Area Number |
20530450
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
作道 信介 弘前大学, 人文学部, 教授 (50187077)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
羽渕 一代 弘前大学, 人文学部, 准教授 (70333474)
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Keywords | 出稼ぎ / プッシュ・プル / ホールド / 生活史法 / インタビュー / 故郷で暮らす方法 / 大間町 / 漁業 |
Research Abstract |
本研究は、本州最北県、青森県津軽地方の人びとの生活史の検討を通じて、「地域を形成し人を留め置く力」〈ホールド〉の創出や喪失の諸条件を明らかにするところにある。作道(2006)は「出稼ぎという慣行の成立が人口流失を防いだ」と考え、出稼ぎが経済学的なプッシュ・プルに抗するように、「地域を形成し人を留め置く力」〈ホールド〉として働いたという仮説を提出した。本研究は、青森県内での老人会を中心とした生活史調査(「津軽の人生」調査)と家族形態・労働観を探る量的調査との組み合わせで、この仮説の検証と一般化をおこなうものである。 本年度の調査では、下北郡大間町の出稼ぎ経験者23人を対象に生活史調査をおこなった。これまで実施してきた津軽地域との比較をおこなった。 主要な知見は以下のとおり。出稼ぎの一般的傾向については(1)まず、青森県の出稼ぎは津軽地域中心とされてきたが、対人口比で見ると、下北地域の出稼ぎ率も高く、とくに、高度経済成長以後の出稼ぎ率は津軽地域とほぼ重なる、(2)出稼ぎの稼動先、職種には地域特有の傾向はない、やや北海道への出稼ぎの残存傾向がみられた、(3)就労経路については、津軽地域とは異なり、家族・親族の割合が高いことが把握された。生活史については、(1)漁業(昆布漁)・林業と出稼ぎを組み合わせた暮らし、(2)継時的には、兼業から通年出稼ぎの専業化、(3)通年出稼ぎでは、失業時期に地元での生業に従事、(4)職場では技能習得をしながらの継続雇用、といった知見がえられた。事例検討では、(5)団塊世代では、集団就職に出ると「戻れない」からと出稼ぎを選んだ事例、(6)老年期に漁業への回帰事例、があった。今回の出稼ぎ調査では、とくに高度経済成長期以降、継続雇用を続けた例をみることができた。出稼ぎは、他の生業や社会保障(失業保険)と組み合わせて「故郷で暮らす方法」として機能してきたことを確認することができた。
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Research Products
(2 results)