2008 Fiscal Year Annual Research Report
後期近代における社会的排除とアイデンティティーアランスにおける都市底辺層
Project/Area Number |
20530451
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
稲葉 奈々子 Ibaraki University, 人文学部, 准教授 (40302335)
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Keywords | 後期近代 / 社会的排除 / フランス / 都市底辺層 / 社会運動 / アイデンティティ / ネオリベラリズム / 社会権 |
Research Abstract |
都市底辺層の社会運動の担い手である移民出身者に対する聞き取り調査をパリ市を中心に行った。社会的排除の経験というマイナスのアイデンティティを政治化する過程について、比較検討の対象として、日本でも同様に移民労働者の社会運動に対する聞き取り調査を行った。同時に政治的なアイデンティティが社会運動として表出する契機であるG8対抗フォーラムにおいで、「持たざる者」のアイデンティディの表象について調査を行った。 マイナスのアイデンティティが政治的ナイデンティティに、転換する過程を、単なる相対的剥奪やルサンチマンだけでは説明することはできず、近代主義的価値観に基づく「自由な個人」、さらにはそれを尖鋭化したネオリベラリ、ズム的価値観ぶ、個人の挫折の経験に付与する意味を歴史的背景を考慮して考察する必要性が明らかになった。アイデンティティの形成と転換は、個人に対する質的なインタビューによってしか把握することはできず、本研究ではそうした質的なデータの蓄積を行った。 聞き取り調査から、エスニック・グループやジェンダーどいつたっながりよりも、「自立していない」. がゆえに、「自立支援」「社会統合支援」といった社会政策の対象とさせられる者の連帯感の情勢のほうが、社会運動の核として機能していることが明らかになった。その政治化は、「社会統合」=マジョリティへの統合に向かう場合と、「弱者」=マイノリティのままで社会的に認知されることを求める場合がみられた。
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Research Products
(9 results)