2010 Fiscal Year Annual Research Report
現代ヨーロッパにおける民族・人種間コンフリクトの多角的研究
Project/Area Number |
20530462
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
レヴィアルヴァレス C. 広島大学, 大学院・総合科学研究科, 教授 (80284123)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
町田 宗鳳 広島大学, 大学院・総合科学研究科, 教授 (10334450)
材木 和雄 広島大学, 大学院・総合科学研究科, 准教授 (70215929)
中坂 恵美子 広島大学, 社会科学研究科, 准教授 (20284127)
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Keywords | ヨーロッパ / 移民・難民 / 統合 / 共生 / 差別 / 国際研究者交流 / 民族間対立 / 日本 |
Research Abstract |
本年度は、一昨年度に行った海外現地調査、昨年度に行ったシンポジウムをもとに、さらに研究を深化させ、成果をまとめる作業を行った。本研究参加者及びシンポジウム参加者等から原稿を集め現在編集作業を行っている研究成果が本年度中に出版される予定である。 研究成果の概略は以下のようである。法律の面ではヨーロッパの統合が進行するにつれて、各国において移民若しくはマイノリティに対して「差別」と「排他」のメカニズムが徐々に弱っており、それは、ヨーロッパ統合の全体の流れを取りまとめたEntzinger氏やオーストリアを事例としたBenedek氏の研究報告で明確にされた。しかし、他方では各国の固有の事情によりその全体的な流れに数多くの抵抗が存在し、その中でも歴史的側面は重要で、材木によるセルビア共和国における難民とマイノリティの研究は、歴史の傷跡の重さ、またミクロ的なアプローチの重要性を思い起こさせる。また、多くの統計をもとにしたフランスを事例とするChoquet氏も植民地の歴史背景を共有するアルジェリア出身の二世三世の移民の子孫の社会統合には固有の問題が存在すると指摘する。ただし、経済的、歴史的な要因のほかに文化的な要因の存在も働いているのではないかと彼は提言し、それに対して人口学者のRichard氏は長期に渡って研究とされてきた統計グループのデータに基づき、統合の成功を決定する要因の中には入国の年齢、親の教育履歴、言語能力も大きく関わっていると断言する。統合のプロセスと国の教育政策の関係を取り扱うレヴィ=アルヴァレスにとっても個人の固有の特徴より、国そして地方、学校、教員のそれぞれの働き方が決定的な要因として影響を及ぼしていると思われるが、Dubet氏の研究成果を取り上げ、学校に頼れる限界を強調し、マイノリティの統合には国と地方の政策の重要性の再確認を呼びかける。
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Research Products
(6 results)