2010 Fiscal Year Annual Research Report
ライフストーリー・アーカイヴ現象にみる<個人の歴史化>と世代継承性の経験的研究
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20530482
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Research Institution | Japan Women's University |
Principal Investigator |
小林 多寿子 一橋大学, 大学院・社会学研究科, 教授 (50198793)
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Keywords | ライフストーリー / アーカイヴ / オーラルヒストリー / 個人の<歴史化> / 世代継承性 / 共時的現象 / 書物化 / 質的研究 |
Research Abstract |
本研究課題は、1990年代後半から顕著になったライフストーリー・アーカイヴ化の動向に着目し、その実態を把握するとともに、戦後、さまざまな文章運動や自分史ブームのなかで書かれてきた膨大なライフストーリーがアーカイヴ化のなかで個人的経験の語りから歴史」へ変容する過程と、この動向が他国でも共時的現象であることの現代的意味を社会学的に解明することにある。ライフストーリー作品のゆくえを辿り、ライフストーリー・アーカイヴ現象としての実際を明らかにし、アーカイヴ現象の社会学的意味を個人の<歴史化>と世代継承性という観点から調査研究することをめざした。この課題の下、三年目の22年度は、これまでの調査をもとにライフストーリー・アーカイヴの実態調査について、(1)ライフストーリー活動とアーカイヴ関係者のインタビュー補足調査、(2)多様なアーカイヴの動向調査、(3)調査結果の検討という三つの調査研究を継続し、さらに成果のまとめに取り組んだ。(1)の実態補足調査では、福岡県筑後市八女市と愛知県春日井市という二つの地域における自分史収集・収蔵活動に取り組む組織の関係者にインタビュー調査を実施した。福岡県では自分史を書く文章運動グループの活動、愛知県では地方自治体の文化プロジェクトとしての自分史の収集活動を取材した。(2)としてストックホルムノルディック博物館やヘルシンキ大学関係者にインタビューをおこない、北欧のライフストーリー・アーカイヴの事例を聴き取り調査した。(3)として、国際社会学会RC38「伝記と社会」でバイオグラフィの社会学的研究のセッションを共同で組織して議論し、日本民俗学会国際シンポジウム「オーラルヒストリーと<語り>のアーカイブ化に向けて」では日本の現状を報告した。現代のアーカイヴ現象と個人の経験の語りの集積からいかに個人の<歴史化>を社会学的に考察できるのか検討した。
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