2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20530486
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
長谷 正人 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (40208476)
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Keywords | ポストモダン / テレビドラマ / 後衛 |
Research Abstract |
1.山田太一作品を単なる脚本作品としてではなく、テレビドラマ作品(映像作品)として見直すために、演出家の河村雄太郎氏(『早春スケッチブック』、『春までの祭』、『マニゴン・バゴン・タオン』、『真夜中の匂い』など)と深町幸男氏(『春の一族』、『今朝の秋』、『冬構え』など)にインタビューして80年代当時のテレビドラマ制作業界の様子をうかがい、テレビ史への認識を深めた。 2.山田太一を、「後衛の作家」と位置付ける新しい視点を発表した。これは、寺山修司もかかわったTBSの『あなたは・・・』、『日の丸』といったシネマ・ヴェリテ的な手法を使った60年代の前衛的テレビ作品や、テレビマンユニオンが70年代に制作した、『海は蘇る』や『欧州から愛をこめて』といった前衛的ドキュメンタリードラマ作品と比較・対照させることで私が創出した概念である。この「後衛」という概念によって、山田太一作品のテレビ史のなかでの位置づけが明確になったはずである。 3.前衛的作品では、観客の日常生活の自明性が問いかけられる。今のままの日常生活を疑いもなしに送っていいのですか、と。それに対して山田太一の作品でも、日常性に亀裂が入るような劇的な出来事が起きる。しかし、前衛的作品とは違って、そのように亀裂の入った日常生活をその事件の後でどのように生き延びていくかが丁寧に描写されているのである。これは、前衛による日常否定を探求してきた近代の文学・芸術のなかで特異な位置を占めるだろう。
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