Research Abstract |
虚偽検出の新たな指標として事象関連電位,特に,P300成分が注目されている。実験室における正検出率は,従来の末梢神経系の指標を上回っており,その実務応用が期待されている。その一方で,P300は非常に微弱な電気活動を対象としているため,妨害工作が予想される実務導入に向けての様々な問題を解決していくことが必要である。そこで,まばたきや眼球運動などのアーチファクトを防止するための聴覚呈示法の有効性(研究1),抑制型と興奮型による妨害工作(countermeasures)の影響について検討した。 研究1では,聴覚呈示と視覚呈示という2つの刺激モダリティの違いを検討し,瞬き等の眼球運動によるアーチファクト抑止による聴覚呈示の優位性を予測したが,刺激モダリティによる有意差はなく,逆に,聴覚呈示では刺激が分割して呈示されるため,瞬間的に処理できる視覚呈示に比較して全体のP300振幅が減少することがわかった。研究2では,身体的カウンターメジャー(すべての刺激呈示に対し,つま先に力を入れる興奮型),心理的カウンターメジャー(常に200から7ずつカウントダウンする抑制型)ともに,裁決刺激のP300振幅を減少させ,容易に妨害工作が可能であることを明らかとした。但し,刺激呈示に対して求めているボタン押しの反応時間の平均とSDは,カウンターメジャーを課さない過去の実験の平均とSDと比較して大きくなることがわかり,カウンターメジャーを行っていることを検出できる可能性を示唆した。以上の研究は,平成21年度の国内外の学会で発表するとともに,今後も継続実験を検討している。
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