Research Abstract |
虚偽検出の新たな指標として事象関連電位,特に,P300成分が注目されている。実験室における正検出率は,従来の末梢神経系の指標を上回っており,その実務応用が期待されている。平成20年度から実施している,聴覚呈示と視覚呈示という2つの刺激モダリティの優位性に関する実験,妨害工作を反応時間で監視する方法について学会発表するとともに論文化した。また,新たな研究として多重プローブ法に関する実験を行った。3刺激オッドボール課題によるGKT(guilty knowledge test)は,標的刺激1,裁決刺激1,非裁決刺激4からなる単一プローブ法(裁決刺激が1つ)での研究が主である。これに対し,標的刺激1,裁決刺激5,非裁決刺激20からなる多重プローブ法(複数の質問を同じセッションで呈示するため裁決刺激が5つ)を用い,有罪条件と無罪条件で多重プローブ法の有効性を検討した。その結果,有罪条件の裁決刺激が無罪条件の裁決刺激よりも有意に大きくなった(p<.01)。また,有罪条件では裁決刺激が非裁決刺激よりも有意に大きく(p<.05),無罪条件では非裁決刺激が裁決刺激よりも有意に大きくなった(p<.05)。つまり,検査時間を短縮できる多重プローブ法の有効性が確かめられた。さらに,多重プローブ法の刺激比率を従来の裁決刺激と非裁決刺激の比率(1:4)から,新たに1:1の比率による同比率多重プローブ法を構築した。この同比率多重プローブ法の有効性が確認できれば,疲労や慣れの効果の問題を克服できる。 なお,平成21年度は,国際学会のシンポジウムで2回発表(1回は韓国心理学会からの招待)するなど,研究の目的で記した,「国際学会での発表等を通じて,P300による虚偽検出の実務応用の可能性を広める」という,目標も達成できたと考える。
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