Research Abstract |
3刺激オッドボール課題によるGKT(guilty knowledge test)は,標的刺激1,裁決刺激1,非裁決刺激4からなる単一プローブ法での研究が主である。これに対し,昨年度は標的刺激1,裁決刺激5,非裁決刺激20からなる多重プローブ法を用い,有罪条件と無罪条件で多重プローブ法の有効性を確認した。本年度は,多重プローブ法の刺激比率を従来の裁決刺激と非裁決刺激の比率(1:4)から,新たに1:1の比率にして同比率多重プローブ法の可能性を検討した。その結果,有罪条件におけるP300振幅の有意差は認められなかったが,400-700ms区間平均電位(positive slow wave)を求めたところ,有罪条件でのみ裁決刺激と非裁決刺激に有意差が認められた。この同比率課題は,刺激呈示回数と検査時間を半分にできる点で優れている。また,無罪条件の多重プローブ法の裁決刺激に対し,自我関与刺激が混入した場合のfalse positive errorの可能性について検討した。具体的には,無罪条件のシナリオを読ませ,標的刺激:裁決刺激:非裁決刺激の呈示比率を1:5:5のGKTを実施した。その際,裁決刺激の1つに自己関与刺激を割り当てた。その結果,無罪条件の裁決刺激に自宅の所在地の町名(自我関与刺激)が混入したにもかかわらず,裁決刺激と非裁決刺激に有意差が認められず,false positive errorを回避できることが分かった。最後に,得られた少数データの無作為抽出をコンピュータで大量に反復(1000回)することで,母集団全体の分布を推定して統計的評価を行う方法であるブートストラップ法による個別判定を行った。その結果,マイルドな状況での実験データでは検出率は低くなり,より実務に近い状況のデータ,あるいは,実務でのデータ収集による個別判定に関する検討の必要性が提起された。
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