2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20530662
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
鈴木 光太郎 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 教授 (40179205)
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Keywords | 月の錯視 / 視空間知覚 / 見かけの大きさ |
Research Abstract |
野外にて実際の月と鏡を用い,月の錯視を模した状況下で,この錯視に関わる眼位と両眼視の要因について検討を行なった。 実験は大学キャンパス内で夜間に実施した。満月に近い月を,被験者から水平方向,上方向20度,下方向20度においた鏡に映した。鏡の大きさは100cmx50cm,被験者から鏡までの距離は4m。被験者には,水平方向に見える月の大きさを標準刺激として,上方向と下方向それぞれの方向に見える月の大きさをマグニチュード推定法で答えさせた。実験に参加した被験者は14名で,このうち半数の7名を,実験の前半を片眼で,後半を両眼で観察する条件(単眼→両眼条件),残りの半数を,その逆の順の両眼→単眼条件に振り分けた。 その結果,両眼→単眼条件では,水平方向の月に対して上方向の月が過小視され(平均0.8倍程度),月の錯視が得られた。下方向の月の場合には,水平方向の月に対してやや小さく見えたが(有意差はあったものの),上方向ほどの過小視ではなかった。これに対して,単眼→両眼条件では,前半の単眼視による観察では,方向による月の大きさの違いは見られなかった(つまり,月の錯視は生じなかった)が,後半の両眼視による観察では,上記と同様の錯視が生じた。このことは,両眼でいったん月の錯視を得た場合には,その後単眼で観察しても月の錯視が得られるが,最初から単眼で観察した場合には,月の錯視が得られないということを意味する。以上の結果は,月の錯視の生起には,両眼での観察と視方向が大きく関わっていることを示唆している。
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