2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20530663
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Research Institution | Kyoto City University of Arts |
Principal Investigator |
高橋 成子 Kyoto City University of Arts, 美術学部, 教授 (90216721)
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Keywords | 物体知覚 / 空間知覚 / 文脈効果 / 芸術的評価 / 美術教育 |
Research Abstract |
物体知覚と空間知覚における文脈効果の違いの検討を行なった。 刺激の文脈の体系的変化に対応して、どのように知覚体験が変化しそれがどの様な脳活動として現れるかという観点から昨年度行なった脳イメージングの結果をさらに解析し、物体知覚と空間知覚において文脈統合過程がどのように異なるかを明らかにした。従来の研究で明らかにされている視覚系の階層構造における情報処理特性を参照することによって、物体知覚と空間知覚において文脈統合過程の階層構造、および、それらの処理を担当する脳内部位の推定をして神経機構モデルを構築した。 脳内処理機構のモデルは以下の通りである。知覚的文脈は、4つの過程で処理される。視覚系初期過程では、対比、輪郭線やゲシュタルトの連続性などの文脈が処理され、腹側系において物体知覚として文脈処理がされる。また、背側系においては、3次元奥行き、空間的定位、運動系情報変換のための枠組み変換過程の文脈処理がされる。そして、前頭前野側頭部位において、場面としての知覚情報処理がされ、意味的文脈、先行経験による推定がされる。このように、知覚的文脈の処理は、階層的な過程を経ることによって達成されることを示した。モデルを基に、知覚的文脈の処理過程にもとづいて、美術作品における芸術的評価過程・芸術体験について、それを構成する心理過程、そして、心理過程の基盤となる脳機構について考察し、モデルを提案した。これにより、主観的で個人差が大きいと考えられてきた芸術経験についても、脳機構の枠組みで捉えることができることを明らかにした。また、成果の応用として、美術教育が学力に対してもつ意義について脳機能の観点から検討した。
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Research Products
(3 results)