2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20530700
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
北本 正章 青山学院大学, 教育人間科学部, 教授 (10186273)
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Keywords | 子ども学 / 子ども観 / 比較教育社会史 / 子どもの発見 / 家族戦略 / 児童救済 / 捨て子 / 教育福祉 |
Research Abstract |
福祉国家の登場と共に国民教育は新しい子ども観/発達観のもとに社会福祉政策の不可欠な部門として展開してきた。本研究計画の目的は、過去1世紀に及ぶ欧米の教育福祉政策を支えてきた子ども観の社会史基盤を解明し、子ども学研究の課題を検討することを通じてわが国における子ども学の基本カテゴリーを抽出し、その構成と展開の学術的基盤の再構成をめざすものである。本研究の第3年度(最終年度)の研究は、前年度までの研究成果を踏まえて、次の2点に絞ってすすめた。第1は、近代教育学と子ども観の根幹をなす「子どもの発見」を巡る定説を、子ども観の社会史の観点、とりわけ「捨て子」と「野生児の発見」の観点から見直すことであった。この成果は、英米児童文学文化研究会での口頭発表「〈子どもの発見〉再考」(2010.12)、および論文「〈子どもの発見〉に関する教育思想論的考察」(2011.3)にまとめた。また、白百合女子大学大学院研究プロジェクトのセミナーでの講演「アリエス以降の50年」(2010.7)においてもふれた。第2は、子ども学の全領域にかかわる重要概念のひとつ「家族戦略」(Family Strategy)の概念に関する検討である。この点に関する研究成果として、論文「<家族戦略>と子どもの価値に関する比較教育社会史的考察」(2011.3)にまとめた。さらに、子ども学の社会史的基盤を構成する児童福祉史に関する研究では、この分野における第一人者であるカニンガム教授(イギリス・ケント大学)とのインタビューをもとに、世界子ども学研究会で口頭発表したものを、論文「ヨーロッパ子ども観史研究における教育福祉史の研究動向と基本文献:Hugh Cunningham と Peter N. Steamsの研究から」(2011.3)にまとめた。さらに論文「ヨーロッパ美術史における<イノセント・イメージ>の系譜とW・A・ブーグロー」(2011.3)では、近代ヨーロッパ美術史におけるInnocent Child Imagesの系譜を素描し、子ども観の展開を図像学的に跡づける手がかりをいくつか提示した。これら以外に本年度は、カニンガム著『近代ヨーロッパの子ども観と子ども救済の社会史(仮題)』(新曜社より刊行予定)の翻訳に着手し、P・S・ファス編『世界子ども学研究事典(全3巻)』(原書房より出版予定)の邦訳出版企画も、前年度から引き続き監訳者として進めてきており、本年度の研究実施計画を効果的に展開できた。以上の研究計画と成果は、わが国における子ども学研究の学術的基盤形成の次のステップを確かなものにする上で、多少とも貢献できるのではないかと考えている。
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Research Products
(4 results)