2010 Fiscal Year Annual Research Report
米国ニューヨーク市学区教育委員会制度改革における「2009年問題」の調査研究
Project/Area Number |
20530711
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
坪井 由実 愛知県立大学, 教育福祉学部, 教授 (50115664)
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Keywords | 教育委員会制度 / アメリカ教育 / 教育ガバナンス / 教育長 |
Research Abstract |
(1)ブルームバーグ市長による学区教育行政支配(2002年州教育法、2009年までの時限立法)の正統性は、それまでの学区教育委員会主導による学校改善が停滞し学力向上政策の「失敗」によって説明されていた。しかし、この7年間、児童生徒の学力向上は州学力テストではある程度の改善がみられたものの、全米標準学力テスト(NEAP)データによれば、むしろ悪化している。また、いわゆる市長支配によって学力向上の目標は達成されつつあるとする説(K・ウォン)もあるが、この間、3回にわたり面接したJ・ヴィテリッテやJ・ヘニッグは、教育ガバナンス改革と学力向上との間には直接的な因果関係はないとする説が有力である。 (2)ニューヨーク市学区教育ガバナンス改革提言レポートが、市議会、公選オンブズ機関及びNPO組織など7団体から提出されている。その多くは市長支配によって学力の向上がもたらされたとはいえないまでも、市長の学区教育への介入は、学区の学校改善力(institutional capacity)を高めているとし、市長支配を条件つきで容認している。 (3)これらの提言を受け、パターソン州知事と州議会は、2009年8月、一部改正(各学校のスクール・リーダーシップ・チームの父母代表の研修プログラムの整備、地域教育長による学校長の達成評価など教育アカウンタビリティ・システムの再編など)により、2015年まで市長支配を継続することとした。 なお、この間の研究成果は、近く著書にまとめて出版する予定である。
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