2010 Fiscal Year Annual Research Report
「心の理論」高次テスト(日本版)は高機能広汎性発達障害の補助診断法として有効か?
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20530896
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Research Institution | Hyogo University of Health Sciences |
Principal Investigator |
伊藤 斉子 兵庫医療大学, 医療福祉学部, 准教授 (10223182)
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Keywords | アスペルガー症候群 / 高機能自閉症 / 注意欠陥多動性障害 / 「心の理論」高次テスト / 「言外の意味」理解 / ワークブック版 / 成人 / 評価 |
Research Abstract |
背景】研究者(2003)は,高機能広汎性発達障害(HFPDD)の客観的な補助診断法を開発するために,Happe(1994)を参考にして,日本文化に適合させた「心の理論」高次テスト(コンピューター・ソフト版とワークブック版)を新たに開発した.これまで「言外の意味」理解能力(高次の「心の理論」)のうち,10課題(嘘・直喩・ふり・反対の感情・見かけと現実・隠喩・罪のない嘘・冗談・説得・皮肉)の学齢期から思春期にかけての発達と性差を明らかにした.【目的】今年度はワークブック版を用いて,1)「心の理論」高次テスト(日本版)が成人のHFPDDと注意欠陥多動性障害(ADHD)の差異について検討した.2)健常な高齢者を対象に「言外の意味」理解能力の成熟について検討した.【対象と方法】HFPDD成人10名,ADHD成人4名,健常成人268名(高齢者30名,健常青年238名)であった.通過率の群間の違いについては,統計解析ソフトIBM SPSS 19.0vによりカイ2乗検定で検討した.自由記述回答については,IBM SPSS Text Analytics for Surveys等を用いて質的分析を行った.【結果】1)ADHD群の通過率は10課題中8課題で100%であった.ADHD群とHFPDD群の通過率の差異については,見かけと現実・罪のない嘘・皮肉の課題において,ADHD群の方が統計的有意に高かった.2)健常な青年群で通過率91.7%であった「罪のない嘘」では高齢者群では100%であり回答種類も豊富であった.【考察】1)「心の理論」高次テスト(日本版)ワークブック版は成人のHFPDDとADHDの鑑別に寄与できる可能性が示唆された.今後も資料蓄積し検討を継続する必要がある.2)10課題のうち「罪のない嘘」課題では,豊かな人生経験がより反映される傾向を認めた.
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