2009 Fiscal Year Annual Research Report
Chaitinの停止確率Ωの一般化がもたらす量子測定に対する不完全性定理の研究
Project/Area Number |
20540134
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
只木 孝太郎 Chuo University, 研究開発機構, 機構准教授 (70407881)
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Keywords | ChaitinのΩ / ランダムネス / アルゴリズム的情報理論 / 統計力学 / 情報理論 / 不完全性定理 / 量子論基礎 / 不動点定理 |
Research Abstract |
私は、Chaitinらによって創始されたアルゴリズム的情報理論を拡張して、量子力学に適用し、量子測定に関するゲーデルの不完全性定理を導出しようと試みている。本研究課題は、この全体構想の一環であり、昨年度と同様、本年度も、平成19年に私が導入したアルゴリズム的情報理論の統計力学的解釈(以下、"統計力学的解釈"と略す)を大々的に活用して研究を進めた。この統計力学的解釈を実際の物理系で実現することは、量子測定に関するゲーデルの不完全性定理を導出したこととほぼ同値であり、これを目標に研究を進め、以下の成果を得た。 1. 統計力学的解釈で現れる熱力学的量のランダムネスに関する性質を、更に詳細に調べた。この量は、Chaitinの停止確率Oの一般化であり、統計力学的解釈では、温度が熱力学的量の圧縮率の役割を果たす。私は、温度自身の圧縮率も温度で表されることを発見し、その結果として、圧縮率に関する不動点定理を導いた。本年度は、特に、この不動点定理について研究を深め、一連の研究成果は、国際会議ALC2009, 4th CLCR, MFCS 2009, FICS 2009, ITW 2009で逐次発表した。また、国際会議Physics and Computation 2009では招待講演を行った。更に、国際論文誌Journal of Physics : Conference Seriesに掲載された。 2. 統計力学的解釈を深めるため、その起源であるChaitinの停止確率Oの性質について研究を進め、Oと停止問題との間の計算能力の差異について詳しく調べた。その結果、Oと停止問題との間には、計算可能性の理論の文脈でありながら、一方向性関数的な計算能力のギャップがあることを発見し、国際会議CiE2009で発表した。そして、統計力学的解釈の熱力学的量についても同様の性質があることを発見し、2009年度冬のLAシンポジウム、2009年度証明論研究集会、日本数学会で発表した。
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Research Products
(23 results)