2008 Fiscal Year Annual Research Report
多胡事象(近傍星の重力マイクロレンズ現象)と銀河系構造
Project/Area Number |
20540239
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Research Institution | Nagano National College of Technology |
Principal Investigator |
大西 浩次 Nagano National College of Technology, 教授 (20290744)
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Keywords | 重力マイクロレンズ現象 / 多胡事象 / 多胡天体 / 褐色矮星 / 赤外線観測衛星「あかり」 / 重力レンズ / 銀河モデル / MOA-2007-BLG-192 |
Research Abstract |
多胡事象とは、近傍の星で確認された初めての重力マイクロレンズ現象である(大西2006,Fukui et al.2007)。重力マイクロレンズ現象とは、重力レンズ天体の重力レンズ効果によって背景天体が増光する現象である。この現象の起きる確率は、銀河系中心の天体でも100万分の1程度であり、近傍の星ではさらに小さい。このため、近傍の星(GSC0356-01328)のマイクロレンズ現象(多胡事象)は、確率的にありえない現象であった。一方、マイクロレンズの光度曲線の解析などから、レンズ天体(=多胡天体)は褐色矮星などの低質量星である可能性が高いと考えられる。これらより、多胡事象は「現在考えられている質量分布関数より低質量側が大きい」ために観測できたと解釈できる。これを確かめるために、まず、レンズ天体(=多胡天体)の正体を明らかする必要がある。Gaudiたち(2008)は、増光の直後の近赤外線(JHK)測光観測より、増光した背景天体(A0V型星)から赤外超過が見えたようだと指摘している。 そこで、増光天体と多胡天体のスペクトルを分離するために、2008年7月22日から23日にかけて、日本の赤外線観測衛星「あかり」のNIR cameraで、GSC0356-01328の近赤外線分光観測を実施した。その結果は現在解析中である。これらの研究と同時に、私の属する重力マイクロレンズ観測グループMOAはマイクロレンズ現象MOA-2007-BLG-192の解析から褐色矮星(0.06太陽質量)と惑星から成る最小サイズの惑星系を発見した。この結果は、低質量星が標準的な銀河モデルよりはるかに多数ある可能性を示唆し、多胡事象の確率的な解釈と無矛盾である。今後、「あかり」の解析と共に、多胡事象の確率的解釈が可能な銀河モデルの構築を検討したい。
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