2010 Fiscal Year Annual Research Report
多胡事象(近傍星の重力マイクロレンズ現象)と銀河系構造
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20540239
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Research Institution | Nagano National College of Technology |
Principal Investigator |
大西 浩次 長野工業高等専門学校, 一般科, 教授 (20290744)
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Keywords | 重力マイクロレンズ現象 / 多胡事象 / 多胡天体 / MOA / あかり / 質量分布関数 / 褐色矮星 / 浮遊惑星 |
Research Abstract |
多胡事象とは、近傍の星で確認された初めての重力マイクロレンズ現象である(大西2006,Fukui et al.2007)。重力マイクロレンズ現象とは、重力レンズ天体の重力レンズ効果によって背景天体が増光する現象である。この現象の起きる確率は、銀河系中心の天体でも100万分の1程度であり、近傍の星ではさらに小さい。このため、近傍の星でのマイクロレンズ現象(多胡事象)は、確率的にありえない現象であった。一方、マイクロレンズの光度曲線の解析などから、レンズ天体(=多胡天体)は褐色矮星などの低質量星である可能性が高いと考えられる。これらより、多胡事象は「現在考えられている質量分布関数より低質量側が大きい」ために起きた現象である解釈できる。まず、レンズ天体(=多胡天体)の正体を明らかするために、2008年7月22日から23日にかけて、日本の赤外線観測衛星「あかり」のNIR cameraで、GSC0356-01328の近赤外線分光観測を実施した。残念ながら、ヘリウム冷却以降の観測のためS/Nが悪く、有意なデータを得ることが出来なかった。現在、地上の大型望遠鏡(例えば、すばる望遠鏡)での高分散分光での検出を検討している際中である。これらの研究と同時に、MOA(Microlensing Observation in Astrophysics)では、マイクロレンズ現象による系外惑星探査において、系外太陽系内の惑星分布の研究(Gould et al 2010)と共に、MOAII望遠鏡による高時間頻度連続観測の観測から、TAGO天体の正体を示唆する新しい種族の天体「浮遊惑星」を発見した(Sumi et al 2011)。2006年から2007年の2年間のデータで、継続時間が2日以下のマイクロレンズ現象を10例発見した。これらは、木星質量程度の浮遊惑星(主星に束縛されていない惑星質量の天体)によるマイクロレンズ現象と考えられる。また、この新しい種族の天体によって、低質量側の質量分布関数がこれまでの2倍程度に成る事が判った。これらより、多胡天体が、褐色矮星や浮遊惑星である可能性が示唆できる。
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