2010 Fiscal Year Annual Research Report
ナノスケールの遍歴電子磁性-電子移動を伴う光磁気特性の解明-
Project/Area Number |
20540327
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
山本 昌司 北海道大学, 大学院・理学研究院, 教授 (90252551)
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Keywords | ハロゲン架橋遷移金属錯体 / ナノチューブ / ポリアセン / 光誘起相転移 / 群論 / シアノ架橋銅モリブデン化合物 / 光誘起磁性 / 時間依存ハートリィ・フォック法 |
Research Abstract |
プロジェクト発足以来3年を経て、4角柱ナノチューブ状ハロゲン架橋白金錯体の合成・測定・理論共同研究が結実し、Nature Materials(2010年発表インパクト・ファクター29.5)に掲載されることとなった。京大理・北川教授(錯体化学)、阪大基礎工・若林准教授(X線構造解析)、東大工・岡本教授(光学観測)等と共同で、新規ハロゲン架橋白金錯体[Pt(C_2H_8N_2)(C_<10>H_8N_2)I]_4(NO_3)_8の物性解明を進め、この物質が ○類希な遷移金属ベースのナノチューブを形成し、 ○水分子の吸蔵特性を持ち、 ○混合原子価白金による新奇電荷密度波状態を形成する ことを解明した。筆者は特に、光学伝導度スペクトルのピーク起源解明に理論計算をもって貢献し、基底状態電荷密度波が、チューブ形状に特有な2次元Eu表現に属するものであることを突き止めた。 一方、シアノ架橋銅モリブデン化合物Cu_2[Mo(CN)_8]の光誘起磁性について、新規の理論研究を開始した。この物質は東大理・大越教授・錯体化学研究室の手になるものであり、波長の違う可視光を照射することにより、オン・オフ可逆の光誘起磁性体であることが知られている。しかし、その磁化増幅・減衰機構について、一切の物理的・微視的解釈は得られておらず、トライ・アンド・エラーの物質合成研究が先行するのみである。筆者は、まず群論を用いて可能な基底状態磁気秩序を精査し、精巧な相図を描いて物質パラメタを特定し、さらに時間依存ハートリィ・フォック法を用いて光照射後の磁化ダイナミクスを計算した。光照射時間(励起密度)、印加磁場、誘起磁化最大値の間に成り立つ非線形な関係について、定量的な知見が得られつつあり、課題最終年度に"非線形な"研究の深化・発展が期待される。
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Research Products
(9 results)