2010 Fiscal Year Annual Research Report
放射光X線と中性子を併用する硬磁性体の3次元磁気モーメント密度分布観測法の開発
Project/Area Number |
20540331
|
Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
伊藤 正久 群馬大学, 大学院・工学研究科, 教授 (90124362)
|
Keywords | X線磁気回折 / 磁気モーメント密度分布 / スピンモーメント / 軌道モーメント / 強磁性体 |
Research Abstract |
X線磁気回折実験手法(XMD)を希土類強磁性体CeRh_3B_2へ適用し、hk0系列逆格子点において、スピンおよび軌道磁気形状因子を分離して測定することに初めて成功した。軌道磁気形状因子が正、スピン磁気形状因子が負であることから、磁気モーメントの主成分が軌道磁気モーメントであることが示された。 先ず、得られたスピンおよび軌道磁気形状因子に対し、Ce-4f電子の双極子近似原子モデルによる理論形状因子を用いるフィティング解析を行ない、次の結果を得た。実測の軌道磁気形状因子はCe-4f双極子近似理論原子モデル曲線でよく再現され、また、フィッティングにより得られたCe-4f軌道磁気モーメント値は1.3μ_Bで、これはSakurai等による磁気コンプトン散乱実験で推定された値125μ_Bに近い。また、スピン磁気形状因子はCe-4f双極子理論近似原子モデル曲線で再現されず、Ce-5dおよびRh-4d電子の寄与の可能性が示唆された。 次いで、本実験のスピンおよび軌道磁気形状因子の和を取ることにより全磁気形状因子を得、これをAlonso等およびGivord等による偏極中性子回折実験(PND)による0k1系列逆格子点の全磁気形状因子と比較したところ、hk0系列の方が0k1系列に比べ、sinθ/λに対し早く減少することが示され、磁気モーメントの実空間分布に結晶方位異方性があることが示唆された。 さらに、XMDによるhk0系列とPNDによる0k1系列を組み合わせた全磁気形状因子データに最大エントロピー法(MEM)を適用し、3次元磁気モーメント密度分布を得ることに成功し、Ceサイトに特異的な密度分布を観測した。本研究は、XMDとPNDが相補的であることを示し、さらに両者の組み合わせにより硬磁性体の3次元磁気モーメント密度分布観測が可能なこと、を明らかにした。
|