2008 Fiscal Year Annual Research Report
非調和フォノンによる重い電子系の形成と超伝導の発現
Project/Area Number |
20540347
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
上田 和夫 The University of Tokyo, 物性研究所, 教授 (70114395)
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Keywords | 物性理論 / 強相関電子系 / 低温物性 / 磁性 |
Research Abstract |
電子系と結合した非調和フォノンのグリーン関数について、二次摂動の範囲で研究した。非調和性の詳細によらず、各状態間の遷移ごとに自己エネルギー、ヴァーテックス補正、規格化因子の3つの因子を導入することによってグリーン関数が書けることを明らかにしてその具体形を求めた。このグリーン関数を用いて計算される核磁気緩和率は、以前に求めた自己無撞着な調和近似と定性的には同様な温度依存性を持つことを示した。これらの結果は、J.Phys.Soc.Jpnの論文として公刊された。 これに続いて、非調和フォノンとの結合による電子系への影響について研究を進めた。まず、局所的な非調和フォノンが各サイトにあるとして、電子系の質量増強について調べた。アイシュタインフォノンによる質量増強は温度によらず一定値を取ることが知られているが、非調和フォノンによる質量増強は温度により、低温に行くほど大きくなる。非調和性が強く、二重井戸型ポテンシャルのようになると低温領域での質量増強は大きな値を取り得る。 さらに、非調和フォノンを媒介とする超伝導機構についての研究を開始した。調和フォノンを媒介とする超伝導では、転移温度に一番影響が大きいのはフォノンの振動数であることはよく知られている。非調和フォノンを媒介とする超伝導において、非調和性が強い場合にはフォノンの振動数は小さくなるにもかかわらず、転移温度は高くなることがあり得ることが明かになった。
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