2008 Fiscal Year Annual Research Report
量子中間子を用いた量子力学の非局所性検証の理論的研究
Project/Area Number |
20540391
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Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
筒井 泉 High Energy Accelerator Research Organization, 素粒子原子核研究所, 准教授 (10262106)
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Keywords | 量子もつれ / 同種粒子 / Bell不等式 / 中間子 |
Research Abstract |
本年度は、まず中間子等の素粒子を用いたBell不等式の検証実験における基本的な問題として、同種粒子系に特有な量子もつれとは何か、またその大きさの尺度(量子もつれ定量化のための測度)をどのように構築するかについて研究を行った。同種粒子系の場合は、Pauliの排他律のために粒子のスピンによって許される状態の粒子の交換に対する対称性が規定される。これには2つの側面があり、その一つは対称性によって状態が制限されるとともに観測量も対称性を考慮した制限を受け、そのために非古典的な相関を生み出す量子もつれそのものの再検討が必要になることであり、二つ目は対称性を持つ状態の分類とそれらの量子もつれの定量化の必要性である。 一つ目の側面については以前、Ghirardiらによって2つの部分系に分解する場合の量子もつれについて、非古典的な相関との関係において考察されていたが、今回の研究では申請者はより一般的な枠組を用いて、任意の部分系への分解にも応用可能で、相関の物理的意味も明確な量子もつれの定義を与えることに成功した。 また二つ目の側面については、boson(対称)、fermion(反対称)、及びanyon的な置換対称性を持つ粒子の可能な量子もつれのタイプを分類し、これらに対する量子もつれの度合いを測る測度族を系統的に構成する方法を提案した。この測度族は、従来標準的に用いられてきた尺度(Mayer-Wallachらの大域的量子もつれ測度等)を含む一般的なものであり、量子推定の精度としての意味をも持つ。この新たな測度族を典型的な(GHZ状態やW状態などの)量子もつれ状態へ応用することにより、多体系の複雑な状態の量子もつれの様子を定量的に見ることができ、さらにこれまで判別できなかった量子状態の区別等にも極めて有用であることがわかった。この結果は、量子情報処理のプロセスにおいて、量子もつれがどのような役割を果たしているのかを調べる際に、非常に有益だと考えられる。
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