2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20540391
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Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
筒井 泉 High Energy Accelerator Research Organization, 素粒子原子核研究所, 准教授 (10262106)
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Keywords | 量子もつれ / 同種粒子 / Bell不等式 / 中間子 / 量子相関 |
Research Abstract |
一般にK中間子系やB中間子系の対崩壊を用いたBell不等式による局所性の検証実験には、粒子崩壊に伴う問題(検証の受動性とunitarity問題)が根幹的な障碍として知られているが、これとは別に、素粒子の場合には相関のクラスター分解性などが生じることから、同種粒子性を考慮した量子相関の数学的基礎を与えることが必要となる。この点において、近年提案されているGhirardiらの相関の議論と提案を見直し、測定器の設定と相関の関係について考察することにより、同種粒子の量子相関の確立にはこれらの間に一定の条件が必要であることを一般的な枠組から示すことができた。この結果は、通常の光子を用いる検証実験を含めて、量子力学の基礎を検証する実験において問題となる相関の意味を厳密に定める上で、重要な意義があるものと考えられる。 なお、本グループが昨年度、本研究課題の研究結果として新たに提案した非自明な量子相関の物差しである「量子もつれ測度」は、本年度、中間子を用いる局所性の検証実験の理論的な先行研究を行っているBertlmann(ウィーン大学)のグループらにも用いられて、その有用性が示されている。また、本研究結果については、ハンガリー(科学アカデミーブダペスト中央研究所)でも講演発表し、インディアナ大学やシンガポール大学その他の原子核物理の実験家や量子基礎論の専門家とも意見交換を行ない、中間子系のみならずproton等の原子核系も局所性の検証実験に有用であることが諒解された。 一方、これらに加えて量子特異点の物理的な影響を調べるために、調和振動子型ポテンシャルに閉じ込められた多粒子系が分離壁に発生する量子圧を、理論的及び数値的に研究した。これは量子圧の異なる温度依存性や粒子数依存性が、粒子の統計性や、閉じ込めポテンシャルの遠方での発散の程度等にどのように依存するかを、(量子井戸等の)以前の研究と比較対照したもので、高温での量子圧発散などの閉じ込めポテンシャルの特定な形に依存する部分の他に、極低温での量子圧依存性や粒子数依存性等の基本的性質など、粒子の統計性によって決まる純粋に量子的な根幹部分が存在することを明かにした。
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