2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20540391
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Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
筒井 泉 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 准教授 (10262106)
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Keywords | 量子もつれ / 同種粒子 / Bell不等式 / 中間子 / 量子相関 |
Research Abstract |
22年度では、本研究課題の最重要問題である中間子等の素粒子からなる同種粒子系の量子相関の定義を、物理的な観点から確立することと、非局所性と非決定性の整合性問題を新しい角度から考察するため、以下の研究を行った。 (i)多体系の量子相関とその測定依存性 一般の多体系の量子状態が保有する部分系の間の相関は、これをどのように測定するかによって、異なる結果になる可能性がある。その端的な場合は、同種の素粒子系(例えば2電子系や2中間子系など)の量子相関であり、粒子の同種性のために測定の範囲に制限が存在し、そのために量子状態の外形的な形式だけでは、その相関、とくに量子もつれの有無が判定できない。このような多体系の量子相関が、どのように測定の設定に依存するかの一般論を展開し、同時に種々の具体的な例も提示することによって、物理的な意味の明解な量子相関の定式化に成功した。 (ii)量子力学における非局所性と非決定性 近年、ConwayとKochenによって提出された「自由意志定理」は、量子力学における局所性と測定者の自由意志を前提にしたときに、測定結果が非決定論的であることを論証したものである。その内容については最近、Bell定理との関係をもとに批判的な検討がなされているが、その議論を論理的に整理することによって、ConwayとKochenの結果は1つの可能性として整合的であることを明らかにし、また、従前のAravindによる局所性の議論を行う際に用いられたモデルによって、より簡明な証明が可能であることを発見した。
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