Research Abstract |
1.新生代Linthia属の研究 (1)古生態学的研究.石川県の大桑層,富山県の頭川層,新潟県の川詰層でLinthia nipponicaの産状調査と標本採集を行った.ウニ化石は,厚さ数十cmの細粒砂層中にパッチ状に集まって産することが多く,生息場所の同相中に保存されたと考えられる.他のウニ類を伴わず,この種を優占種とする独特のウニ群集が存在したらしい.生息環境は,貝類,貝形虫類,有孔虫類から,冷水域の浅海砂底であったことが示唆された. (2)分類学的研究.日本産Linthia5種すべてを対象に,生物測定学的手法を用いて各分類形質の定量的評価を行った.野外調査で採集した標本,金沢大,北大,東北大,東大,産総研等で保管されていた標本を測定した.この結果,L. nipponicaとL. tokunagaiは同種の可能性が極めて高く,L. yessoensisとL. praenipponicaはこれらとは別種と思われ,L. boreasteriaはL. yessoensisと同種の可能性が示された.これら(1)(2)の成果は第13回国際棘皮動物学会他で公表された. 2.白亜紀ウニ類フォーナの研究 (1)貝類フォーナとの関係.ウニ類化石の産出時期に対応する時代の貝類の古生態と生息環境が調査,総括された.この成果はPaleontological Research誌に公表された.この成果に対応したウニ類の変遷についての研究が21年度に行われる。 (2)白亜系ウニ類フォーナ.鹿児島県川内市の久見崎層の泥岩から見つかったウニ群集を調べた結果,それは同相中に保存されたHeteraster macroholcus1種のみからなる群集であることがわかった。Heterasterは汎世界的に分布した属で,一種のみが独占的に見つかる産状はヨーロッパの種と共通点があるが,それらは一般に砂岩から産出する.この相違が生じた原因は現段階では不明である.また、宮古層産のウニ類を入手し,現在,クリーニング中である. 3.現生ウニ類の生態調査 (1)浅海砂底に棲むウニ類の生態調査.隠岐にて,ブンブク4種Metalia spatagus, Pseudomaretia alta, Lovenia elongata, Brissus agassiziiの調査を行った.その結果,これらが微妙な堆積物粒度の違いによって数m単位で棲み分けており,また,各個体群の個体数の変動には,風浪等による海底の撹乱とそれに対する殻と棘の機能形態が深く関わっていることが明らかになった.この成果は第5回棘皮動物研究会で報告された. (2)深海に棲むウニ類の生態調査.2008年12月に行われた東大海洋研の淡青丸のよる沖縄周辺の調査に参加した.水深359〜7
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