Research Abstract |
本年度は,宮城県登米市周辺(東北日本弧の前弧地域),山形県瀬見・最上地域,仙台西方の中新世火山岩の現地調査を,学生の協力を得て行った.それと同時に,東北日本の第三紀火山岩に関する文献調査を更に系統的に進め,斑晶鉱物組合せ,主要・微量元素組成の広域的な変化を明らかにすると同時に,マントルの組成や溶融程度の変化に対応した特異な火山岩(ピクライト,低Ni玄武岩,アダカイト,高Mg安山岩など)の発見に努めた.一方,これに関連して,第三紀中新世における日本海の拡大に伴う,いわゆる二極的(バイモーダル)火山活動の実態と成因についも注目して研究を進めた.量的に二つの極をなす玄武岩と流紋岩の中間の化学組成をもつ火山岩(安山岩)が欠如する(または僅少である)ことは,昔からディリーギャップと呼ばれてきた.このギャップはもともと大洋島の火山岩について言われたもので,二極的火山活動はリフト帯,海洋島,島弧など,様々なテクトニック場で発生している.大陸リフト帯の火山岩を研究しているエチオピアの研究者を2010年1~3月の2ヶ月間,私の研究室に招へいして共同研究を進め,中新世の日本海拡大に伴うリフト帯火山活動から現在の島弧火山活動までの,流紋岩・デイサイトからみたマントルの組成とマグマ生成プロセスの変化,及び二極的火山活動の成因に関する論文を英文国際誌に彼と共著で投稿することができた.なお,これまでの私の「オフィオライトと東北アジアの地質学的研究」に対し,2009年9月4日に日本地質学会賞が授与された.
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