2008 Fiscal Year Annual Research Report
TEMーEELSによる惑星物質のサブミクロンスケールでの構造・化学解析
Project/Area Number |
20540467
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
富岡 尚敬 Okayama University, 地球物質科学研究センター, 准教授 (30335418)
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Keywords | 透過電子顕微鏡 / かんらん石 / 酸化 / 赤外分光 / ライフーナイト / 超構造 |
Research Abstract |
3種類の炭素質コンドライト隕石の基質(マトリクス)を空気中で約600℃まで加熱し,高温下での赤外スペクトルその場観察実験を行った.試料は主に鉄に富むかんらん石(フォルステライト成分15-74%)からなる.477℃までの加熱において,中赤外スペクトルはかんらん石に特徴的な10,11,12ミクロン付近の強いピークを示したが,大きなスペクトル変化はみられなかった.しかし,572℃以上の加熱では,11ミクロンのピークのスプリット,及び10ミクロン,llミクロンのピーク強度の逆転が生じた.また,合成したFeに富むかんらん石(ファヤライト成分53%)の空気中600℃での加熱実験を行い室温に冷却後,赤外スペクトル測定を行ったところ,コンドライトと同様のスペクトル変化が観察された.更にこのスペクトル変化の原因を精査するため,隕石,合成かんらん石の冷却後の試料を透過電子顕微鏡で詳しく観察した結果,それぞれの試料のかんらん石は,加熱前の試料には全く見られない(001)面上の積層欠陥を高頻度で有し,この欠陥はかんらん石C軸の3倍に相当する超構造(ライフーナイト)に相当することが明らかになった. 以上の事から,空気中の加熱によるコンドライトマトリクスの赤外スペクトル変化は,隕石中の鉱物間の化学反応や部分溶融ではなく,マトリクスの第一成分であるかんらん石中のFeの酸化に伴う超構造への構造変化に起因することが明らかになった.この赤外スペクトル変化は,将来の探査機による火星や小惑星の赤外スペクトル観測において,表層の酸化還元状態を知るための有用な標準データと成りうる.
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Research Products
(8 results)