2010 Fiscal Year Annual Research Report
TEMーEELSによる惑星物質のサブミクロンスケールでの構造・化学解析
Project/Area Number |
20540467
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
富岡 尚敬 岡山大学, 地球物質科学研究センター, 准教授 (30335418)
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Keywords | 透過電子顕微鏡 / 炭素質コンドライト / 含水鉱物 / 衝撃実験 / サーペンティン / 小惑星 |
Research Abstract |
本年度は、小惑星表層試料の弾丸打ち込みサンプリング法における、含水物質への衝撃加熱の影響を探ることを目的とし、含水炭素質コンドライトの衝撃実験と回収試料の透過電子顕微鏡(TEM)観察を行った。試料は窒素ガス銃によりステンレス弾丸を打ち込むことで約1GPaの衝撃圧を与えたマーチソン隕石である。回収物を試料の形状と大きさに応じて、従来型イオンミリング装置、イオンスライサ、集束イオンビーム装置(FIB)を使い分けて薄膜試料を作成し、TEM観察を行った。弾丸付着物、破砕飛散物試料共にマーチソン隕石マトリクス本来の微細組織をかなり残しており、含水層状鉱物である短冊状、チューブ状、繊維状のtochilinite, Fe-Mg serpentineが確認された。短冊状の粒子は結晶度の高いFe-Mg serpentineであった。アルゴンイオンで作成した試料中のチューブ状、繊維状粒子の多くは、Fe-Mg serpentineとtochiliniteの中間組成を持つ。これらが示す電子線回折リングの一部はFe-Mg serpentine、tochiliniteで指数付けできるが、magnetite、troiliteの回折リングも観察された。衝撃実験で約600℃以上の加熱を受けたマーチソン試料について過去に報告されたの同様な、Fe-Mg serpentine, tochiliniteの分解反応が生じたと考えられる。Fe-Mg serpentine, tochiliniteの常圧での分解温度はそれぞれ500-600℃、245℃であり、薄膜加工時のアルゴンイオン照射による加熱(200℃以下)が原因とは考えにくい。少なくとも一部のFe-Mg serpentineは、衝撃加熱が原因で分解した可能性が高い。今後、衝撃前試料の薄膜加工ダメージも詳細に検討し、含水鉱物の分解プロセスを明らかにしていく予定である。
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Research Products
(9 results)