2010 Fiscal Year Annual Research Report
分子熱浴に接した多原子分子系のクラマース-フォッカー-プランク方程式の新展開
Project/Area Number |
20550011
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
長岡 正隆 名古屋大学, 大学院・情報科学研究科, 教授 (50201679)
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Keywords | 化学物理 / 原子・分子物理 / シミュレーション工学 / 自己組織化 / 非平衡 |
Research Abstract |
ブラウン粒子のダイナミクスに対応するフォッカー-プランク方程式は、ブラウン粒子に内部自由度のある系に拡張することができる。しかし、ブラウン粒子と溶媒分子の大きさが同程度である凝集系では互いの運動のスケールを分離することができない。このため分子動力学計算の結果をフォッカー-プランク方程式で扱う座標系への射影する方法として、揺らぎの中で座標系を決定する方法を提案した。 HF分子は線形分子であるため、分子の掃いてつくる分布は瞬間分子固定座標系において軸対象になるが、実際には周囲に水分子が揺らいで存在しているために、回転揺らぎが表現できる座標系であるとよい。HF分子の重心の速度相関と分子軸の回転相関を計算したところ、予想されたように長時間の相関が現れる。特徴として、10fsオーダーの時間スケールをもつ減衰が見られるため、0fs、20fs、100fsの窓を設定した上で、この時間窓内で起こる揺らぎの中で定義される平均的な分子構造をもとに座標系をそれぞれ定めた。得られた結果は設定した窓サイズによって大きく異なる。特に窓サイズ20fsでは、HF分子の重心運動に関しては窓サイズ0fsのダイナミクスに近いダイナミクスを表現しつつ、窓サイズ0fsでは表現できなかった回転運動を表現することができた。フォッカー-プランク方程式の導出過程では、時空間スケールの分離に関連した近似が行われている。したがって、時間スケールの設定に伴う分布ダイナミクスの変化は、近似レベルによりいくつかの粗視化表現が可能であることを予見させる。
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