2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20550018
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Research Institution | Toyota Physical & Chemical Research Institute |
Principal Investigator |
岩田 末廣 財団法人豊田理化学研究所, フェロー (20087505)
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Keywords | 分子間相互作用 / 分子軌道理論 / 基底関数欠損誤差 / 電子相関理論 / ファン・デア・ワールス項 / 分散項 / 希ガス原子間相互作用 |
Research Abstract |
局所射影Hartree-Fock分子軌道(Locally Projected、LP HF MO)を基底とした摂動論によってハートリーフォック近似内では基底関数欠損誤差(Basis Set Superposition Error,BSSE)を避ける高速計算法を実現した(1電子励起3次摂動,LP MO 3SPT)。これまでは、BSSEを取り除くためにCounterpoise(CP)手順という手間のかかる方法が使われていたが、この理論ではそのような煩雑な手順を使わないため、水の25量体の相互作用エネルギーもHF近似内ではBSSEなしにHF計算とほとんど同じ計算時間で計算出来る。ファン・デア・ワールス(分散)項の計算には電子相関を計算に考慮しなければいけないが、この場合に対するCP手順の適切性を詳細に検討し、その限界と適用方法を明確にした。広く使われているaug-cc-pvDz基底によるMP2計算やCCSD(T)計算は、CP補正の有無に拘わらず、不正確な結合エネルギーと結合距離を与えることを示した。LP MOでは、被占軌道・励起軌道ともに各分子に局在しているので、2電子励起摂動展開においてファン・デア・ワールス項に寄与する電子配置だけを取り込む理論を構築できる。この理論によって、希ガス2量体、水2量体、HF2量体のポテンシャルエネルギー曲線をaug-cc-pvXz(X=D,T,Q)で計算し、高精度の計算結果と比較し、方法の有効性を確認した。また、ハロゲン結合の結合エネルギー計算に適応し、この結合がファン・デア・ワールス力であることを明瞭にすることに成功した。イオンとπ電子系の相互作用の研究にもこの方法が活用できることも示している。しかし、強い水素結合系では基底関数依存に不健全な傾向が見いだされることが判明し、理論の改善の必要も明らかになった。
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