Research Abstract |
ホスト-ゲスト化学に関連して,無機の大環状化合物(メタラマクロサイクリック)は極めて少ないアニオンレセプターとなりうることが期待されている。本年度は昨年度の研究結果はを発展させる目的で,4,4'-ビピリミジン(bpm)の置換基効果を明らかにするため,bpmの6,6'位にPh基を導入したPh_2bpmを合成し,[Cu(CH_3CN)_4]X(X=BF_4, PF_6, NO_3)とPh_2bpmをC_2H_4雰囲気下において反応させ,対アニオン選択的に5種の単核構造Cu(I)-Ph_2bpm/C_2H_4錯体1a~4が生成することを見出し,それらをX線構造解析,TG-DTAなどより特徴付けた。 X=BF_4^-を用いた場合,[Cu(Ph_2bpm)(C_2H_4)]BF_4のブリック結晶1aと針状結晶1bが得られた。1aはPh_2bpmのピリミジン環とPh基を介してπ-π相互作用を形成しているのに対し,1bはPh_2bpmのピリミジン環のみを介してπ-π相互作用を形成し,さらにいずれの錯体もPh_2bpmの配位不飽和な橋かけ部位を介してC-H…N相互作用を形成している。その結果,1aでは単核構造が三次元的に積層しているのに対し,1bではジグザグ形の三次元構造が積層している。またX=BF_4^-を用いた場合,錯体1bと同様のジグザグ形の三次元構造を有する[Cu(Ph_2bpm)(C_2H_4)]ClO_4 (2)が生成した。一方,X=PF_6^-を用いた場合,Ph_2bpmのピリミジン環とフェニル基を介したπ-π相互作用による一次元構造を有する錯体[Cu(Ph_2bpm)(C_2H_4)]PF_6 (3)が,X=NO_3^-を用いた場合,Ph_2bpmのフェニル基間のπ-π相互作用によりジグザグ形の一次元鎖構造を有する[Cu(Ph_2bpm)(C_2H_4)]NO_3 (4)が生成した。いずれの錯体もTG-DTAの結果,極めて熱的に安定なCu(I)-エチレン付加体であることが明らかとなった。 これらの結果は,新規な無機のアニオンレセプターを設計・合成する上で有用な結果である。
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