2010 Fiscal Year Annual Research Report
巨大・複合機能システムをつくるための「超分子合成化学」
Project/Area Number |
20550098
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
佐竹 彰治 東京理科大学, 理学部・第二部化学科, 准教授 (00277831)
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Keywords | 超分子化学 / 超分子合成化学 / ポルフィリン / 光捕集アンテナ |
Research Abstract |
本研究では、仕掛けを有するユニット分子を超分子自己組織化させ、大きさが数ナノメートルを超える巨大な超分子系や複数の機能性分子が組合わされた複合超分子系を効率よく構築する方法論の開発とその機能発現の開発を目的としている。本年度は、特に紅色光合成細菌の光捕集アンテナモデル系として、安息香酸を上下3個ずつ、計6個を取り付けたポルフィリンナノリングを化学合成し、ナノリング間の協同的な水素結合を利用したナノチューブの構築をおこない、ナノチューブ内での励起エネルギー移動を調べることを目的とした。(結果)上下に安息香酸を3個ずつ、計6個を取り付けた内径約2ナノメートルの穴をもつ樽状のポルフィリンナノリングの合成に成功した。カルボン酸をもつナノリング溶液は、クロロホルム中に単純に溶解することが不可能であったため、一旦アンモニウム塩として溶解し、系中で酢酸を添加することによって、カルボン酸体を発生させた。その結果、酢酸添加に伴って、紫外可視吸収スペクトルや蛍光スペクトルの変化が観測され、組織体が形成されていることが分かった。マイカ基板上に組織体溶液をキャストし、乾燥後、原子間力顕微鏡(AFM)を用いて表面を観測したところ、平均高さ約27nmのナノ構造体が観測された。また、超分子ナノチューブの末端にのみ相互作用するエネルギー受容体をナノチューブに超分子化学的に導入し、ナノチコーブ由来の蛍光スペクトル変化を追跡したところ、ナノチューブ部からエネルギー受容体へのエネルギー移動が観測され、光捕集アンテナ機能を有することが明らかとなった。6.8x10^<-7>M濃度の溶液ではナノリングと受容体の複合体の化学量論比が約5:1となり、これはAFM観測の結果とほぼ一致した。この成果は人工光合成系の構築につながる意義のある研究であり、ナノ化学の発展にも大きく寄与するものである。
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Research Products
(5 results)