2009 Fiscal Year Annual Research Report
磁性金属に連結した伝導系の開発とスピンエレクトロニクス材料への応用
Project/Area Number |
20550118
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
西川 浩之 Ibaraki University, 理学部, 教授 (40264585)
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Keywords | 分子性物質 / 磁性伝導体 / スピンエレクトロニクス / 分子性固体 / 合成化学 / 金属錯体 / d-π系 / 電荷移動 |
Research Abstract |
分子性導体の主要な構成分子であるテトラチアフルバレン(TTF)誘導体と量子スピン系を与える多核遷移金属クラスター錯体を用いることにより,磁性と伝導性が強くカップルした新しい物質系の開発を行い,スピンエレクトロニクス材料としての可能性を検討することが本研究の目的である。 本年度は,常磁性金属イオンに直接配位することができるTTF系伝導体として,aminoethylthio-TTFから誘導されるシッフ塩基配位子を有するTTF誘導体であるHsae-TTFが配位したCu(II)錯体を定電流電解法により部分酸化したラジカル塩,[CuII(sae-TTF)2]PF6の圧力下における輸送特性の評価を行った。この塩は常圧では半導体であり,伝導電子と局在スピン間の相互作用は弱いと考えらる。約14kbarの圧力までの測定を行ったところ,電気抵抗の温度依存性に約8kbar付近から大きな変化が見られなくなった。これは,分子積層方向への外圧による圧縮を立体的に大きな新属錯体部位が阻害しているため,ある程度の圧力以上では,分子間相互作用に大きな変化が生じなくなったためと考えられる。また,バンド構造等の電子状態を解明するため,バンド計算を行ったところ,分子間相互作用の観点からは室温において既に4量化しており,パイエルス絶縁体状態になっており,バンド構造からもバンド絶縁体であることが明らかとなった。このことから,従来の磁化率の温度依存性の解釈と整合性がなくなった。また,新しいTTF-金属錯体としてシッフ塩基配位部位が2つある4座配位型の配位子,ならびにマクロサイクリックな配位部位をもつ6座配位型配位子を新たに合成し,それらを用いた金属錯体の合成にも成功している。中でもマクロサイクリック型配位子から得られるCo(II)錯体は,250K付近でスピンクロスオーバ-を示すことを確認した。
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Research Products
(14 results)