2010 Fiscal Year Annual Research Report
磁性金属に連結した伝導系の開発とスピンエレクトロニクス材料への応用
Project/Area Number |
20550118
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
西川 浩之 茨城大学, 理学部, 教授 (40264585)
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Keywords | 分子性導体 / 磁性 / スピンエレクトロニクス / 分子性固体 / 合成化学 / 金属錯体 / d-π系 / 電荷移動 |
Research Abstract |
磁性と伝導性が競合する分子性物質の開発に取り組んでおり、分子性導体の主要構成分子であるテトラチアフルバレン(TTF)が常磁性金属イオンに直接配位することができる配位子とそれを用いた金属錯体の合成をおこなってきた。22年度は常磁性金属への配位部位としてシッフ塩基型配位子を複数導入したTTF-配位子(H_2bsae-TTF)の合成し、この配位子からNi(II)およびCu(II)の中性錯体([M^<II>(bsaeTTF)];M=Cu,Ni)の合成に成功している。中性錯体である[Cu^<II>(bsae-TTF)]の構造は、配位子であるH_2bsae-TTFとCu(II)イオンが一対一で錯体を形成し、中性のTTF部位は金属配位サイトを連結するエチレン鎖の部分で折れ曲がり、歪んだ四配位平面構造をとる金属錯体部位にかぶさった構造をとっている。この錯体を電解酸化し部分酸化塩の作製を試みたが結晶の単利に至っていない。また、シッフ塩基部位をもつ環状配位子であるmacrocyclic-TTF配位子を新たに合成し、Fe(II),Co(II),Ni(II),Zn(II)の各錯体を得ることに成功した。この錯体も種々の対イオンとのラジカル塩の作製を試みたが,現在のところTTF部位が酸化された塩の単離には至っていないものの、[Co^<II>(macrocyclic-TTF)](BF_4)_2は室温以上でスピンクロスオーバーを示すことを明らかにした。さらに、ピラゾール部位を配位子に持つTTF誘導体とピラゾリルボレートが配位したトリシアノ鉄錯体を反応させると,Fe(II),Fe(III),Ni(II)からなる8核キューブ錯体が得られた。TTFを配位子に有する金属多核錯体の報告例は非常に少なく,キューブ錯体はおそらく初めての合成例である。この錯体は、磁気測定の結果,Fe(III)-Ni(II)間には強磁性的相互作用が働き,2K以下で単分子磁石であることが明らかとなった。
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Research Products
(17 results)