2010 Fiscal Year Annual Research Report
有機EL材料における電子・ホール輸送機構の解明と新規材料設計
Project/Area Number |
20550163
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
佐藤 徹 京都大学, 工学研究科, 准教授 (70303865)
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Keywords | 有機EL / 振電相互作用 / 輸送現象 / 量子化学 / 電子-格子相互作用 |
Research Abstract |
有機EL素子の材料開発において、より高効率で発熱の小さなキャリア輸送材料が必要とされている。振電相互作用は、移動度低下や発熱の原因となる。前年度までのTPDなどの既知キャリア輸送分子の研究により、差電子密度が原子上に局在することが、小さな振電相互作用を与えるために必要であることが明らかにされた。また、対称に差電子密度が分布すると選択則によりゼロを与えるモードが発現する。今年度は、これらの知見をもととする分子設計指針により、新規キャリア輸送分子の設計を行った。 新規ホール輸送材料として、トリフェニルアミンを単位として、6つのトリフェニルアミンを対称的に環状に連結した大環状アミン分子を設計した。密度汎関数計算により、差電子密度は窒素原子上に局在し、それが対称的に配列していることが示され、著しく小さな振電相互作用定数を与えることが分かった。さらに単一分子としてのホール輸送特性をしらべるために、振電相互作用による非弾性散乱を考慮した非平衡Green関数計算を行い、電流-電圧特性ならびに消費電力を計算した結果、高移動度と低消費電力が期待できることが明らかになった。ホールと電子のキャリアバランスの問題から高効率電子輸送材料の開発は、喫緊の課題である。同じ分子設計指針に基づき、対称な大環状ホウ素化合物を設計し、先述のホール輸送分子と同様の計算と解析を行った。電子輸送分子としては著しく小さな振電相互作用定数が得られ、高効率電子輸送材料として期待できることがわかった。また、振電相互作用は差電子密度の分布に大きく依存する。差電子密度の分布は、軌道描像だけからでは理解することができず、電子相関が重要であることをHubbardモデルにより示した。
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