2010 Fiscal Year Annual Research Report
御手伝普請を通じた建築情報の地方伝播に関する研究-徳川家霊廟の地方寺社への影響-
Project/Area Number |
20560603
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
伊東 龍一 熊本大学, 大学院・自然科学研究科, 教授 (80193530)
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Keywords | 徳川家 / 霊廟 / 御手伝普請 / 地方 / 伝播 |
Research Abstract |
本年度は、当初の調査内容として次の3つを掲げていた。 (1)主要な大名家の御手伝関係史料および建築関係史料の調査と分析 (2)造営建物の調査と分析 (3)16世紀に御手伝普請を担当した大名家史料の所在調査 まず、(1)については、継続的に目録等を蒐集し、調査対象史料の検討を進め、岡山藩・福井松平藩に関連する史料を蒐集した。 (2)については、一昨年度見出した旧高田藩東照宮の現地調査(建物は現存せず)および建地割の分析および関連資料の調査(新潟県上越市・天崇寺、岡山県津山市・津山郷土博物館)を実施し、その結果、東照宮造営後、高田から津山へ転封となった後も、松平家は、江戸時代を通じて、修理費等を負担していたこと、建物は当初の権現造の形式から、地震後に本殿は正面3間、入母屋造・瓦葺で、地紋彫をはじめとする彫物を多用する建物となっていたことなどを明らかにした。 また、岡山県岡山市東山の玉井宮東照宮本殿(岡山藩東照宮本殿正保2年1645)、および岡山県久米郡美咲町定宗の岩間山本山寺の御霊屋(承応元年1652)の調査を実施した。前者は、3間×2間、入母屋造、銅板葺、1間向拝付で、暮股や手挟等の要所に彫物を配し、黒漆塗を主体とする彩色を施す形式を採用する。大工は、幕府作事方大工頭の木原義久で、幕府との関連をうかがわせる。後者は、徳川家3代および4代将軍を祀る。3間×3間で宝形造の本殿と5間2間、1間唐破風向拝付の拝殿を相の間で接続する形式は、江戸城内紅葉山の徳川家霊廟と同形式である。 (3)については、栃木県烏山の大関家が可能性をもつことが判明した。詳細な調査を実施したい。
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