2008 Fiscal Year Annual Research Report
糖類アモルファスマトリクスのゼロモビリティー温度に基づく不安定物質の超高度安定化
Project/Area Number |
20560702
|
Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
今村 維克 Okayama University, 大学院・自然科学研究科, 准教授 (70294436)
|
Keywords | 糖アモルファス / タンパク質 / 安定化 / 乾燥 / モビリティー / 失活 / 水素結合 / 赤外線スペクトル |
Research Abstract |
糖によって形成されたアモルファスマトリクスは,タンパク質などの不安定物質を包括すると,その劣化を抑制する働きがある.この糖類アモルファスマトリクスによる包括安定化作用は,マトリクスを構成する糖分子の状態と密接な関係があると考えられる.従って,室温以下の低温域においては,極めて高度な保存性が期待できる.本研究では,昇温過程における糖分子の赤外線吸収(IR)スペクトルを連続的に測定できる温度操作フーリエ変換赤外分光分析(TS-FTIR)により,-20℃からTg前後の温度域における糖分子間相互作用(水素結合)の形成状態を解析した.その結果,ピーク波数は温度上昇に伴い高波数側にシフトしていくが,Tgより数十℃低いある温度(T*)においてもピーク波数の増加勾配が顕著に小さくなることが分かった.糖類アモルファスマトリクスの異なる温度における構造エンタルピーの緩和過程を示差走査熱量分析(DSC)により測定した結果,上述のT*以下の温度領域では,構造エンタルピーの緩和が進行しないことが分かった.さらに,異なる温度における糖類アモルファスマトリクスで包括した酵素(アルカリフォスファターゼなど)の異なる温度における失活速度を調べたところ,失活速度の温度に対する増加勾配がT*を境として顕著に大きくなることが分かった。以上のことから,T*は糖分子のモビリティーが極端に制限される温度領域の上限値を表しているものと考えられる.そこで、種々の糖類からなるアモルファスマトリクスのT*を測定するとともにT*を上昇させる物質の探索を行った.その 結果,高分子量の糖ほどT*は高いが,T*以下での酵素の失活速度が高いことが分かった,また、タンパク性の物質が顕著にT*を増加させることが分かった.
|