2008 Fiscal Year Annual Research Report
棘皮動物マナマコ神経ペプチドの網羅的解析と神経機能分化の探索
Project/Area Number |
20570057
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
吉国 通庸 Kyushu University, 農学研究院, 教授 (50210662)
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Keywords | 生体分子 / 蛋白質 / 生理活性物質 / 棘皮動物 / プロテオミクス / 神経 / 機能分化 |
Research Abstract |
マナマコの神経機能の分化を想定した発現蛋白質・ペプチドの網羅的解析には、神経組織を純度良く採取することが重要であるが、放射神経・周口神経共に結合組織に埋没して存在している。また、軟組織であるために生組織の状態のまま顕微解剖で摘出するには高度の熟練の後にも長い摘出時間が必要となり、特に後者は、処理中の生体成分の分解等の問題が予想された。この問題を解決するために、神経を周辺組織毎摘出し液体窒素で凍結後、真空凍結乾燥により形態を保ちつつ乾燥させた。その後、実体顕微鏡下で丁寧に神経組織を摘出した。本法によりこれまで不可能であった周口神経・放射神経の単離が可能となった。なお、摘出した部位が神経組織であることの確認は、神経で発現している生殖関連ペプチドであるクビフリンの特異抗体を用いた免疫組織化学染色により、予め両神経の位置を確認しておいた。 得られた放射神経と周口神経から各500μgを2次元電気泳動法にて分離し予備的な解析を実施した。1次元目等電点電気泳動はpH3-10のImmobiline DryStrip(nonlinear)、2次元目SDS電気泳動はExcelGelXLを用いた。蛍光染色剤(SyproRuby)で染色し、小スポットを見落とさないようにした。染色後、分離スポットの泳動像の観察から、蛋白質の分解を示すスポット像の流れ、分子量方向での多重化は起きておらず、真空凍結乾燥後の顕微解剖操作中の蛋白質の分解は大きく抑えられていると判断した。また、両電気泳動像の比較解析からは、周口神経に多く発現しているスポット14個、放射神経に多く発現しているスポット6個,双方に同程度に発現しているスポット約270個を確認した。1次元目の等電点電気泳動をより狭い領域に絞って実施することで、より多くのスポットを検出することが可能であると予想している。 凍結乾燥法を導入したことで蛋白質の分解を抑えつつ神経組織を高純度に摘出することが可能となり、予備的な解析から発現タンパク質の差を検出する事が出来た。次年度は、2次元電気泳動の分離精度を上げ、本格的な解析を開始する予定である。スポットの物質同定には、液体クロマトグラフ質量分析計を使用する。
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