2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20570066
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
西野 浩史 Hokkaido University, 電子科学研究所, 助教 (80332477)
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Keywords | 昆虫 / 嗅覚 / 糸球体 / フェロモン / 投射ニューロン / 触角葉 / 求心繊維 / キノコ体 |
Research Abstract |
匂いの質の符号化様式についての飛躍的な情報の蓄積とは対照的に、動物が匂いの位置や方向をどのように符号化しているのかについての研究は極めて少ない。本研究では長い触角を持ち、積極的な匂い源定位行動を行う昆虫(ゴキブリ)を用い、介在ニューロンからの細胞内記録・染色法と組織学的手法を組み合わせることで位置依存的な匂い応答を示すニューロンの活動動態とその形態学的特徴を明らかにすることを目的とする。平成20年度においては当初の計画通り、匂いの位置検出に寄与する嗅覚介在ニューロンの網羅的同定に力点をおいた。ルシファーイエローを充填した微小電極を前大脳側葉に刺入し、触角葉(一次嗅覚中枢)中に樹状突起を持ち、軸索を脳高次ニューロパイルに伸ばす嗅覚介在ニューロン(投射ニューロン)からの細胞内記録を行いつつ、触角への局所匂い刺激を行った。その結果、触角の特定領域に受容野を持つものを数多く同定することに成功した。さらに触角神経に別の蛍光色素を注入することで、介在ニューロンの樹状突起と求心性繊維の軸索終末との位置関係を共焦点レーザー顕微鏡にて精査したところ、嗅感覚細胞の位置依存性投射マップと良い対応関係を持つことを明らかにした。形態学的に同定されたニューロンの中にはその全像が不明であった性フェロモン処理に特化した投射ニューロンも含まれる。さらに、完全変態昆虫(ミツバチ)においても嗅受容細胞が触角内の細胞体の位置に応じた組織化が存在することを発見し、これを国際誌に発表した(現在印刷中)。さらに世界に先駆けて、昆虫の一次嗅覚中枢の中に匂いの位置情報を表現しうる神経基盤が存在することを、日本の神経工学系の書籍の一節にて発表した。以上、本研究プロジェクトのアウトリーチ活動、実験の進捗状況ともに順調で、計画達成率は概ね90%と総括したい。
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