2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20570066
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
西野 浩史 北海道大学, 電子科学研究所, 助教 (80332477)
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Keywords | 昆虫 / 嗅覚 / 糸球体 / フェロモン / 投射ニューロン / 触角葉 / キノコ体 / 前大脳 |
Research Abstract |
視覚的手がかりの乏しい夜間に活動する動物は、しばしば匂いによるコミュニケーションを発達させている。昆虫がわずかな性フェロモンを触角で探り当てながら遠方の交尾相手に定位する能力はファーブルをも驚嘆させてきた。本研究では、長い触角を持ち、正確な匂い源定位能力をもつゴキブリをモデル動物として、匂いの位置検出に寄与する介在ニューロンの活動動態とその形態学的特徴を明らかにすることを目的とする。 平成22年度は研究の最終年度にあたり、データの解析と論文化に取り組んだ。オスの触角葉にはメスから放出されたフェロモンを特異的に処理するための大きな嗅覚糸球体が存在する。この糸球体から出力する介在ニューロンには触角全域に受容野を持つ1本の大きなニューロンと触角の異なる領域に受容野を持つ6~7本の小さなニューロンがあることをつきとめた。さらに、細胞内記録・染色により、3本の小さなニューロンの形態学的・生理学的同定に成功した。また、性フェロモンの出し手であるメスにおいては、オスの性フェロモン処理糸球体と相同領域に小さな糸球体が存在するが、そこから出力する介在ニューロンが性フェロモン特異的な興奮性応答を示すことを明らかにした。本成果はプレスリリースされ、地方新聞でも紹介された。また、ゴキブリの雌雄の全嗅覚糸球体の形態学的同定に成功した。比較研究からは昆虫の脳内のフェロモン情報処理領域が良く保存されていることも明らかになった。以上の研究成果は5本の原著論文として国際誌に発表した。匂いの位置を符号化する単一ニューロンの活動動態を解明することができ、当初目標は概ね達成したといえる。一方、触角運動と嗅覚介在ニューロンの活動の相関については技術的困難のため、十分な解析ができなかった。よって、計画の達成度は80%と総括したい。
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Research Products
(10 results)