2009 Fiscal Year Annual Research Report
維管束植物の頂端分裂組織の進化を原形質連絡ネットワークから探る
Project/Area Number |
20570097
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Research Institution | Japan Women's University |
Principal Investigator |
今市 涼子 Japan Women's University, 理学部, 教授 (60112752)
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Keywords | 根頂端分裂組織 / 原形質連絡 / TEM / シダ植物 / 裸子植物 / 被子植物 / 頂端細胞 / 進化 |
Research Abstract |
昨年度までの本研究にてデータが不足していた裸子植物について、針葉樹綱(アカマツ)、イチョウ綱(イチョウ)、ソテツ綱(ソテツ)、グネツム綱(グネモングネツムGnetum gnemon)とシニカエフェドラEphedra sinica)を材料に、根端分裂組織を構成する細胞群の細胞壁の原形質連絡密度を求めた。イチョウとグネツムは新鮮な根を得ることが困難であったため、取木によって発根させたものを材料に用いた。結果として、裸子植物の根端分裂組織は、被子植物のそれと同様,最高10.0/μm^2の原形質連絡密度を示した。したがって裸子植物の根端分裂組織の構造多様性、すなわち、根冠に発達したカリプトラをもつ(例アカマツ)か否(グネーツム)か、という特徴の違いには関係なく、すべて低い値の原形質連絡密度をもつことがわかった。 シダ小葉類については、根端分裂組織が、シダ植物大葉類と同様の1個の頂端細胞をもつか、複数の始原細胞群をもつかによって大きく異なる原形質連絡ネットワークを持つ事がわかった。頂端細胞型のマルテンシクラマゴケの原形質連絡密度は最高60-70/μm^2であるのに対して、複数始原細胞群をもつカゲノカズラは最高10.0/μm^2であった。前者はシダ植物大葉類のイワヒメワラビで得た数値と同じであり、後者は裸子植物、被子植物で得たのと同様の数値であった。 以上から、根端分裂組織が1個の頂端細胞をもつか、複数の始原細胞群をもつかによって、原形質連絡ネットワークが異なることが示された。系統群による違いはみられなかった。この結果は、茎頂分裂組織におけるImaichi and Hiratsuka(2008)の結果と同様であり、シュートと根の間に違いがないことが明らかになった。この事実は、4億年前の軸状構造テロムが茎と根を進化させる以前に頂端分裂組織の構造と原形質連絡ネットワークとの間に密接な関係が確立していたことを示すものであり、茎と根の起源を解明する上で重要な情報となると考えられる。
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Research Products
(1 results)