2010 Fiscal Year Annual Research Report
維管束植物の頂端分裂組織の進化を原形質連絡ネットワークから探る
Project/Area Number |
20570097
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Research Institution | Japan Women's University |
Principal Investigator |
今市 涼子 日本女子大学, 理学部, 教授 (60112752)
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Keywords | 根頂端分裂組織 / 原形質連絡 / TEM / シダ植物 / 裸子植物 / 被子植物 / 頂端細胞 / 進化 |
Research Abstract |
本研究の最終年度として、これまでに不足していたデータの補完を行い、結果の総括を行った。被子植物2綱4科4種、裸子植物4綱4科4種、シダ植物大葉類4科5種、シダ植物小葉類3科6種の根端分裂組織構成細胞の細胞壁の原形質連絡(PD)密度を透過電子顕微鏡観察から明らかにした。その結果、根端分裂組織の構造と原形質連絡(PD)ネットワークとの間には高い相関があることが示された。すなわち1個の頂端細胞をもつシダ植物大葉類とシダ植物小葉類の一部では、根端分裂組織における最高値は>48.0±5.6/μm2であった。これに対して複数始原細胞群をもつ種子植物とシダ植物小葉類の残りでは最高値はく19.8±0.0/μm2であり、両者の間に2倍以上の開きがみられた。被子植物と裸子植物との間には違いはみられなかった。一方シダ植物においては、始原細胞が1個か複数かによって大きくPDネットワークが異なり、特筆すべきは小葉類において始原細胞が1個であれば大葉類型、複数であれば種子植物型を示したことである。根端分裂組織のPDネットワークは、植物分類群による違いではなく、分裂組織の構造、特に始原細胞の数の違いによって2つのタイプに分けられる事が示され、これは茎頂分裂組織と全く同様であった。本結果は頂端分裂組織をもつ1個の軸(テロム)から茎と根が作られたとする仮説を支持するものである。さらに頂端分裂組織の起源を解明するため、茎・葉・根を進化させていないコケ植物ヒメツリガネゴケ胞子体のPDネットワークを観察した。結果、コケ植物のPD密度はシダ植物大葉類と種子植物の中間の値ではあるが、発生初期には頂端部で高いことから、PDネットワークはシダ植物大葉類と小葉類の一部がもつ頂端細胞型に近いことが示唆され、コケ植物の胞子体はテロムと比較できる可能性が高いと考えられる。
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Research Products
(1 results)