2009 Fiscal Year Annual Research Report
イネ紋枯病抵抗性・感受性系統における炭素分配制御メカニズムの解明
Project/Area Number |
20580016
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
野瀬 昭博 Saga University, 農学部, 教授 (80045137)
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Keywords | イネ / 紋枯病 / 炭素分配 / 抵抗性 / 感受性 / ヘテロシス / 解糖系 / フェニルプロパノイド代謝 |
Research Abstract |
イネ紋枯病に対する抵抗性を示す2F18-7-32系統(32R)を交配親に用いた時のヘテロシス効果について形態形質と収量形質を解析した。収量形質については、1000粒重は24.7gと中間親に較べ10%のヘテロシスを、一穂粒数は118粒と優勢親より15%のヘテロシスを、ha当たりの収量は12.5tと優勢親の日本晴れの9.5tを31.6%上回るヘテロシスを示した。成熟期の全乾物は5.5gと優勢親・日本晴4.1gより34%高いヘテロシスを示し、一穂籾重は2.48gと優勢親・日本晴2.30gを7.8%上回るヘテロシスを示した。収穫指数については45.0%と中間親と同様であった。出穂日はF1系統で1週間遅く、稈長は18.3%優勢親より高かった。最上位から2番日の葉身の面積は優勢親よりも4.5%のヘテロシスが認められ、その出葉角は19.9°と日本晴れと同様に直葉型を示した。分けつ角は15.8°と32Rと同様であった。分けつ数は32.2と32Rと同様であった。 イネのR.solani抵抗性系統(2F18-7-32)と感受性系統(2F21-21-29)において、R.solaniに感染後の代謝中間体含量とmRNA発現レベルを調べることによって解糖系とペントースリン酸回路が重複する炭素分配クロスロードにおいて、スクロース、澱粉、及び二次代謝への炭素の分配程度を明らかにした。グルコース1リン酸(G1P)、グルコース6リン酸(G6P)、フラクトース6リン酸(F6P)、フラクトース1,6ニリン酸(F1,6P2)、グリセロアルデヒド3リン酸(GAP)、ジヒドロキシアセトンリン酸(DHAP)、ホスホエノールピルビン酸(PEP)の含量は、菌感染後に解糖系が活性化することを示していた。この中間体の増減は関連する酵素遺伝子のmRNA発現の程度とよく対応するものであった。菌感染の抵抗性系統では、F6P、F1,6P2、DHAP、GAP、PEPの含量が感受性系統に較べ有意に高くなった。DHAP含量の増大は、解糖系において炭素分配がスクロース合成の方向に活性化していることを示していた。同時にGAPとPEP含量の増大は、解糖系からシキミ酸径路を経たフェニルプロパノイド代謝への炭素分配が活性化することも観察された。
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Research Products
(1 results)