2011 Fiscal Year Annual Research Report
沖縄島嶼域に生育する有用樹の開花フェノロジーと送受粉機構・結実機構に関する研究
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20580157
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
谷口 真吾 琉球大学, 農学部, 教授 (80444909)
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Keywords | 沖縄島嶼 / 開花結実 / 開花フェノロジー / 結実フェノロジー / 送粉・受粉機構 / 結実機構 / 亜熱帯性樹木 / 繁殖特性 |
Research Abstract |
沖縄島嶼域に生育する亜熱帯性有用樹4種の繁殖特性を形態学的、生理学的に研究した。 1.フクギ:新条伸長前の5月上旬、枝周囲長の100%に環状剥皮を施した雌株では、処理当年の開花数ならびに果実の結実数は無処理個体よりも有意に増加した。さらに、剥皮処理後2年目の個体に前年と同様の環状剥皮を施すと、1年目に環状剥皮した個体と同水準の開花数ならびに果実の結実数が確認された。連年にわたり結実が認められた原因として、フクギは剥皮後の枝の癒合能力が他樹種に比べて顕著に高く、結果枝としての繁殖機能を維持させているものと推察された。 2.テリハボク:新条伸長前の5月上旬、基部直径30~50cmの枝に環状剥皮および摘葉処理を施すと、処理当年の開花数ならびに果実の結実数が無処理枝よりも有意に増加した。しかしながら、この現象は処理当年のみの効果であり、剥皮処理から2年目には処理枝の著しい衰退とともに、花芽は開花の途中段階でその大部分が落下し、8月頃には枯死に至る処理枝も多かった。この原因として、テリハボクは枝の剥皮部の癒合能力が著しく低いことで結果枝としての繁殖機能が衰退したものと考えられる。 3.モモタマナ:果実成熟期の9月に採取した種子の発芽試験を実施した。その結果、内果皮、中果皮、外果皮(果肉)に対する果肉除去や傷付け処理など、物理的な処理に発芽促進効果は認められなかった。モモタマナ種子の発芽は播き付け時期の違いに影響された。最も発芽率が高かったのは、成熟種子を10月中旬までに採取し、直後に取り播きする処理区であり、この時、外果皮(果肉)がない果実での発芽率が10%程度上昇した。 4.リュウキュウコクタン:22年度に実施した操作実験(4月中旬に処理した環状剥皮と摘葉の組合わせ処理)において、果実成熟期(種子発芽力の発生を確認した7月下旬)以降の生残率(着果数/つぼみ数)は剥皮処理と50%摘葉処理で高かった。この現象について、安定同位体13Cのトレース実験により光合成産物のモジュール間の転流の有無を検証した結果、剥皮区あるいは無剥皮区とも、50%摘葉、100%摘葉区に0%摘葉区(対照区)で生産された光合成同化物が繁殖枝としてのモジュール間を有意に転流したことが認められた。 本研究によって得られた開花機構ならびに結実機構に関する知見は、新規の森林造成や伐採後の再造林、あるいは天然更新に用いる地元産種子の安定的な生産技術に寄与することが期待される。
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Research Products
(6 results)