2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20580207
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
池田 譲 琉球大学, 理学部, 教授 (30342744)
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Keywords | イカ類 / 社会構造 / ネットワーク / 脳・神経 / 行動 |
Research Abstract |
イカ類は巨大脳を有し高次脳機能を示す。本研究では、イカ類の高次脳機能が社会性と深く連関すると考え、群れとして表出される同種集団の社会構造を、複雑ネットワーク分析を適用して、イカ類の個性や脳神経の発達にも注目しつつ読み解くことを目的とした。 上記目的達成のために、平成22年度は「社会構造の変異」を熱帯性頭足類のうち、主にトラフコウイカから探り、アオリイカと比較することを目標として以下の結果を得た。 沖縄島沿岸より採集したトラフコウイカ卵を集団状態で孵化飼育し、蝟集・分散の操作を定期的に与えつつ、個体間距離を指標に社会性の発達度合いを調べた。その結果、個体の発達に伴い、個体間の距離が大きくなる傾向が認められた。次に、亜成体期のトラフコウイカを個体識別し、集団における個体ごとの順位を求めるともとに、集団内のソーシャルネットワーク分析を行った。その結果、特定個体間に強い繋がりが見られること、特定の個体が複数の個体と関係性を持つハブ個体となっていることなどが認められた。これらの事実は、単独・底生性とされたコウイカ類にも明確な社会性が存在することを示唆する。一方、トラフコウイカの社会構造を、これまでに知見を得たアオリイカと比較すると、ネットワークにおける個体の位置と順位の関係、ネットワークの複雑さなどにおいて両種に相違が認められた。これは、頭足類の社会性における種間変異を現すものであり、同一の熱帯沿岸海域を住処としつつも、脳や神経系の微細構造に反映される、系統に根差した要因を反映して、個々の種において特有の社会構造がつくられてきた可能性が考えられた。
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Research Products
(3 results)