2010 Fiscal Year Annual Research Report
キリマンジャロの農家経済経営と農村発展:フェア・トレードの役割
Project/Area Number |
20580237
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
辻村 英之 京都大学, 農学研究科, 准教授 (50303251)
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Keywords | コーヒー / フェア・トレード / 教育 / アマルティア・セン / ケイパビリティ / 貧困 / 農家経済経営 / 開発(発展) |
Research Abstract |
コーヒーのフェア・トレード(FLOの国際認証制度)は、最低輸出価格保障とフェアトレード・プレミアム支払の2つの手段で生産者の利益を増やそうとするため、その影響・役割を理解するためには、(1)価格保障と(2)プレミアム支払の、それぞれの影響分析が求められる。 まず(1)についてルカニ村においては、コーヒーの販売代金が、農業経営費、家屋建設費、教育・医療費として支出されることから、それらへの最低限の支出額が保障されることになる。2000年代前半までのコーヒー価格の低迷の結果、特に教育費を捻出できなくなったことが、多くの村民にとっての「貧困」となった。そのためフェア・トレードは現在、十分な教育費を確保する役割を帯びている。 次に(2)について、プレミアムは産地の社会開発の経費として利用される。ルカニ村・フェアトレード・プロジェクトの場合は、図書館の建設、保育園の教材購入、コーヒー苗木(無農薬生産可能)の購入、中学校の建設などの経費として支出されている。価格保障同様、教育水準の引き上げの役割を担っている。 アマルティア・センは、ある個人が自らにとって望ましい生き方・在り方を求めた場合、それを実現するために組み合わせる複数の機能を、その個人が選択可能か否かを評価する「ケイパビリティ」(達成可能な機能の集合)概念を提起している。そしてその集合の中に、人間としての基本的機能が含まれない状態を「貧困」とする。そうすることで、財・所得の不足だけでなく、それらを交換・利用する能力の不足が重要な「貧困」の指標となり、それらの能力を促進する教育の重要性が浮かび上がる。 ルカニ村の場合、村民がコーヒー販売によって求める望ましい在り方は、すべての子供が十分な教育を受けることである。上記のフェア・トレードによる教育水準の引き上げは、この村民にとっての基本的機能を満たす(貧困を解消する)ためのものである。さらには財・所得の交換・利用能力を高めて、貧困解消に相乗効果を及ぼすという意義付けもできる。
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Research Products
(4 results)